実践ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングを中心に資産運用全般について。分散投資でリスクを抑えながら、インカムゲインとキャピタルゲインを目指します。

maneo

ソーシャルレンディング運営企業のリスク・突然の破綻を避ける(番外編)

前回まで運営企業が突然の破綻を避ける仕組みがあるかどうかを判断する手段として資本・株主構成をチェックするという考え方を紹介させていただきました。

資本・株主構成をチェックするという考え方は突然の破綻を避ける目的以外にも重要な点があります。「入っていて欲しい資本(例えば上場企業、商社、ベンチャーキャピタル等)が入っているか」をチェックするだけでなく「入っていると困る資本が入っていないか」も確認できたほうがより安心です。

極端な例で言えば反社会勢力に絡む資本が入っていればもちろんダメですし、そこまでではなくとも社会的に存在意義を認められにくい業態も微妙です。社会的な存在意義が低いと当局が突然規制を変更する可能性が否定できず、業績に大きな影響が出るリスクが高いです。
他にも海外資本、特に関係が悪化している大陸・半島系資本が入っているところは避けたいと考えられている方もおられると思います。このあたりはいい・悪いは別として、個人的な信条をどの程度重視するかによって情報の必要度合いが変わってきそうです。

「入っていると困る資本が入っていない」ことを確認するには、資本構成がすべて公開されている必要があります。これを確実にクリアしているのはSBIとクラウドバンクで、クラウドクレジットもおそらく全て公開していると思われます(出資比率とか記載があればわかりやすいんですけど)。AQUSHはpaidyの開発用資金の調達時に出ているプレスで確認出来るだけでサイトでの記載はありません。このため「入っていて欲しい資本が入っている」のは確認できますが「入っていると困る資本が入っていない」かどうかは確認できません。UBIについては例のごとく資本構成が全く分からずです。

国内でソーシャルレンディング事業を立ち上げるには最低でも資本金5000万円が必要です(貸金業登録の最低資本金が5000万円)。創業者が個人でスッと出せる金額ではないでしょうから誰かしらのバックアップがあるのが普通ではないかと思います。それが誰なのか、事業に役立ちそうなメンツなのか、少なくともアヤシそうなメンツではないのかといった点はソーシャルレンディング投資では非常に重要だと考えるようになりました。何といっても運営会社になんかあったら全部吹っ飛びますから。
ソーシャルレンディング各社は個別案件の詳細開示は当局に制限されていますが、自分自身の情報開示は誰からも制限されてないですよね。ぜひ積極的な情報開示を期待したいです。資本構成と(できれば監査法人のチェックを受けた)財務諸表の開示が望ましいです。ソーシャルレンディング企業は業歴が若い会社が多いので赤字決算の会社も多いでしょうから、資本金と手元資金での運営可能期間の見通し及び増資の検討等について併せて明記してくれると投資判断材料の一助になりそうです。資本政策は企業の重要な施策なので詳細全てを外部へ公開しにくい面もあるかとは思いますが、運営会社になんかあったら全部吹っ飛ぶ投資をしている投資家に対しては一定の情報開示が必要ではないかと思います。親会社がある場合は親会社の情報開示が必須です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ソーシャルレンディング投資にあたってはどうしても個別案件の利回り・リスクに目が行きがちですが、運営企業に対してのこうした視点も大事なのではないでしょうか。個人的にはこっちのほうが重要だと考えています。
初期の頃は正直あまり気にしてなかったのであまり深く考えず投資していた面もありますが(それでも1社あたり200万円を上限にしていました)、今では運営企業の状況が非常に気になるようになってしまいなかなか新規投資が始めれなくなってしまいました。それはそれでつまらないので上限をおさえて(50万円くらい)新規投資してみようかなとも思っています。

やっぱりクラウドバンクもどっかと資本提携して欲しいですね。

ソーシャルレンディング運営企業のリスク・突然の破綻を避ける(3)

いざというときには事業売却というのもあり得る選択肢です。実際、増資が難しくなるといきなり廃業ではなく事業売却を検討することになると思いますので、ある意味ここが最終関門的なポイントだと思っています。

SBIに関しては、特にコメントはないです。

クラウドバンクは、配下の日本クラウド証券自身がみどり証券を買収してグリーンシートの顧客口座ごと引き継いだように、第一種金融商品取引業という器は事業売却時に有利に働くことが期待できるのではないかと思っています。第一種が必要な事業への新規参入にあたっては、新規登録するよりも既存の登録事業者を買収することが少なくなさそうなので、もし売りに出た場合、それがない場合よりも成立する可能性が高いかな、と感じています。実際日本クラウド証券以外にソーシャルレンディング参入企業のAIP証券は第一種金融商品取引業として登録されていますが、過去経営権が移り変わっているようです。第一種の場合「ダメだから廃業する」というより、「ダメだったら売却先を見つける」といった対応で買い手がつく可能性が少しは上がりそうです。もっとも、その場合であっても既存口座を引き継ぐことが必ず期待できるというわけではありません。あくまでも相対的なものであると理解しておく必要があると思います。

クラウドクレジットも、ソーシャルレンディングの中での事業の独自性が高く、かつ既存株主に伊藤忠やマネックスがいますのでいざという時であっても売却先をみつけるのが難しくないのではないかと考えています。実際、べンチャー企業買収の仲介は銀行よりもベンチャーキャピタルが中心ですし日本だと商社もその機能を持っています。大手商社で投資業務を行っている知人がいますが、彼らは本当に幅広く情報持ってますので大手商社が出資しているといざというときにも頼りになるだろうと思っています。

そういう面ではAQUSHもサイバーエージェントやリクルート系のベンチャーキャピタルの出資を受けているので突然破綻する可能性は少ないのかな、と思っています。ただいずれも金融系ではないのでどの程度の調整力が発揮できるかは不透明ではあります。AQUSHに関しては単にソーシャルレンディングに注力しなくなっているので投資を引き上げていますが、もし新しいサービスが出るのであれば再度投資を検討できると思っています。

UBIについては情報を得ることが出来ませんでした。

まとめると以下の通りです。
本業の影響を避ける→突然悪化するような業態でないかを確認する
チェック機構を確認する→第三者のチェックをうける、あるいはチェック済みの情報を公開している
増資の可能性があるところを選ぶ→既存株主構成を確認する、公募増資の条件をクリアできるか確認する
事業売却の可能性があるところを選ぶ→第一種金融商品取引業を選ぶ、ベンチャーキャピタルが出資している企業を選ぶ

以上を踏まえて私が当初投資している5社について一覧にまとめてみました。

maneo SBIソーシャルレンディング クラウドバンク AQUSH クラウドクレジット
運営企業と経営形態 maneoマーケット(1) SBIソーシャルレンディング(1) 日本クラウド証券(1) ExCo(2) クラウドクレジット(2)
株主公開 非公開 公開 公開 一部公開 公開
親会社あるいはVC 非公開だけど多分UBI SBI クラウドバンク (VC出資)
サイバーエージェント、リクルート他
(VC出資)
伊藤忠、マネックス他
親会社の株主公開 非公開 公開 公開 n/a n/a
親会社の株主 不明 有価証券報告書に記載 有価証券報告書に記載 n/a n/a

ソーシャルレンディング運営企業はいずれも(詐欺でない限り)ビジネスを伸ばすことを前提に行動していると思います。しかし、実際は事業が計画通りにうまくいく保証というのはなく、投資家の立場からすると突然の破綻を防ぐ仕組みがきちんと備わっているのかどうかを見定めることが重要だと思います。

繰り返しになりますが、突然の破綻を避けるには運営企業あるいはその親会社が経営状況についてチェックを受けているかを選別することだと思います。「黒字です」とか「チェック受けてます」といった自己申告ではなく定期的にきちんと第三者により監査を受ける体制にあることが重要だと考えています。
また、第三者の出資受け入れによる資本増強や売却によって口座ごと新しい企業へ引き継がれる可能性も吟味することで投資元本への影響を抑えられる可能性は高くなると考えられます。

もっとも過去に事例がないのでそれらの対策で必ず大丈夫と言えるものではないですし、すべてのベンチャーキャピタルが救済のためのアレンジ能力があるわけでもないので、条件を満たしているから必ず安全だというわけではありません。逆に条件を満たしていなくても問題無い企業も当然あると思います。
しかし上記条件を満たしている企業の方が満たしていない企業よりはるかに安心感があるのも事実なのです。

ソーシャルレンディング運営企業のリスク・突然の破綻を避ける(2)

確認対象が明確になったので、続いて経営破綻リスクについてです。

ソーシャルレンディング投資にはデフォルトや延滞といったリスクがありますが、個人投資家の立場で考えると、最も避けたいのが「ソーシャルレンディング運営企業が突然経営破綻し投資元本が返ってこないこと」です。過去の金融事件でも直前まで経営状況の健全性を謳っていた企業が突然破綻して投資家が被害を被るといったケースが多いです。

元来ソーシャルレンディング事業は手数料型のビジネスモデルになっており、また手数料を稼ぐにあたって自社でリスク資産を抱える必要がありません。このため一定の手元資金を保有していれば経営を継続できますので、本来ソーシャルレンディング運営企業が突然経営が破綻するということはありえません。

そこでまず警戒する必要があるのは「ソーシャルレンディング以外の事業が突然大きな損失を出して破綻する可能性はないのか」といった点です。この懸念点は本業が別にあるUBIとSBIの2社にあてはまりますが、SBIの方は上場企業なので詳細の情報が公開されています。個人的にはあまりリスクを感じていないので詳しくは調べていませんが、、一応格付投資情報センターによると2015年9月時点でSBIホールディングスはBBBで投資適格となっています。
一方UBIはどの程度リスク資産を所有しているのか、どういう事業構造になっているのか詳細がよく分かりません。

次に、第三者から経営状況のチェックを受けている企業に投資すれば「突然の破綻」を避けられる可能性が高くなります。特に第三者が突然の破綻を避けるインセンティブを持っている場合はより有効です。このため「第三者からチェックを受ける体制があるか」「ベンチャーキャピタル等の外部資本を受け入れてチェックを受けているか」といった点が確認できると良い思われます。AQUSHとクラウドクレジットはベンチャーキャピタルのチェックを受けており、破綻の予兆を事前にチェックされ万一の場合に必要な対策(後述します)がとられる可能性が高いと思っています。

第三者による経営全般のチェックがない場合、「監査法人が監査した財務諸表」を自分で確認してリスクチェックを行う必要があります。SBIとクラウドバンクは監査法人の監査を受けた財務諸表を公開していますのでこれを行うことが出来ます。財務諸表のチェックポイントでいうと赤字か黒字かという点ももちろん大事ですが、継続性を確認する上では自己資本や流動性資産がどの程度残っているのかが確認できることがより重要だと思います。なお、自分で「黒字でした!」と言ってるような類のモノでは何の判断もできません。

UBIはいずれにも当てはまらないため、突然の破綻を防ぐ仕組みがどの程度備わっているのかが不明です。


また、「突然」破綻しなくとも、思ったように事業が進まず事業の見直しが必要になるケースも考えられます。この場合、とられる手段として資本増強、事業売却、廃業・事業整理等が考えられますがきちんと第三者のチェックを受けている場合、突然破綻することはほとんどなく手遅れになる前に資本増強か、事業売却になると考えられます。

まず資本増強ですが、一般的にはベンチャーキャピタルや大手資本から資本を受け入れることが考えられます。AQUSHやクラウドクレジットは増資にあたってはまず間違いなくこの手法がとられると思います。一方でSBIやクラウドバンクの場合、証券会社なので公募増資という手段も取ることが可能です。いずれの場合も、既存資本(株主)の意向が重要になります。ココらへんの内容は経営陣よりも株主の意向が強く働くポイントです。ですので既存資本(株主)構成がきちんと公開されているのかはものすごく重要です。私にとってはソーシャルレンディング投資にあたって最も重要なポイントの一つです。はっきり言って個別商品の利回りだの担保だのよりもよっぽど重要です。
なお、昨年から今年にかけてAQUSHとクラウドクレジットは第三者割当、クラウドバンクは公募で増資を行った実績があります。

次回に続きます。
メッセージ

名前
メール
本文
ランキング
記事検索
最新コメント
プロフィール

おしょわ

  • ライブドアブログ