個別銘柄の将来の株価を予測できれば、現在の株価が将来の株価よりも割安なものを買っておいて高くなってから売ることで名目上は必ず儲けることができます(「名目上」といっているのは、株価の上がり方よりも物価の上がり方が大きい場合は、高く売れても実質的には損失がでるケースがありうるからです)。
株式投資の手法として、企業のファンダメンタルズを分析して中長期の成長性や割安性をもとに投資判断を行うことは「まっとう」な投資手法として推奨されることが多いです。バリュー投資などはこの考え方に近いと思います。他方株価チャートを基に投資判断することや、短期的な値動きを予想しながら投資判断を行うことは「投機的」な投資手法と捉えられることが多いように思います。では、ほんとうにファンダメンタルズを分析して将来の株価を予測することはできるのでしょうか。
御存知の通り、株価を一株利益で割ったものが株価収益率、通称PER(Price Earning Ratio)になります。
(株価)÷(一株利益)=(PER)
この式を変更して一株利益を右辺に移すと次の式になります。
(株価)=(PER)✕(一株利益)
つまり将来のPERあるいは将来の一株利益が予測できれば株価を予想できることになります。
PERは一株利益に対して何倍の価格で株式が取引されているか、つまりその株式の人気の度合いをあらわしていますが、将来的な一株利益の成長性を先取りしているとも捉えられます。一株利益100円、株価1000円、つまりPER10倍の会社があったとします。この企業の所属している業界が今後無期限に多額の補助金を受け取れることになったとニュースで伝えられたとすると株価が上がることになりますが、いったいいくらになるでしょうか。一株利益が100円から150円へ増えると予測する人は適正株価は1500円、もし一株利益が200円に倍増すると予測すれば株価は2000円まで上がる可能性がある、と判断しそうです。この場合、一株利益は100円に対してPERはそれぞれ15倍、20倍になりますが1年後にはそれぞれ10倍に戻ります。そして翌年以降一株利益が同じ水準で推移すれば株価も変動しなくなってしまいそうです。つまりPERは短期的には上下しても中長期で見るとある一定の値に収斂されることが多いのではないでしょうか。実際のデータで見てみましょう。
金融経済学および行動経済学を専門としており、2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーは、エール大学の自身のサイトで1870年代から現在までの米国S&Pの株価及びシラー式PERの推移を公開しています。シラー式PERとは、過去1年の一株利益ではなく過去10年の一株利益の実質の平均値と実質の株価から計算されます(この「実質」というのはインフレ率調整済みという意味です)。このデータをもとに計算してみると1880−2015年までのシラー式PERの平均は16.63です。
データにはシラー式PERの推移グラフ(青線)も添付されています。かなり上下動が大きいので必ずしも平均に回帰するとは言い切れないようにも見えますが、少なくとも良く見る米国株の右肩上がりのグラフとは大きく異なっているのが見て取れます。振れ幅は大きいものの、上がれば下がり、下がれば上がっています。
(前述のエール大サイトで公開されているエクセルデータに添付されている表から抜粋、黄線と「16.63」は筆者が付加)
興味がある方は先程のサイトのStock market dataセクションにある「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」でデータをダウンロードできます。
ちなみに、現在のS&Pのシラー式PERは24.34なので平均を大幅に上回っていますのでこの指標でみると割高な環境にあるということになります。やはりFRBの金利が上がったら反応してもおかしくないですね。
株式投資の手法として、企業のファンダメンタルズを分析して中長期の成長性や割安性をもとに投資判断を行うことは「まっとう」な投資手法として推奨されることが多いです。バリュー投資などはこの考え方に近いと思います。他方株価チャートを基に投資判断することや、短期的な値動きを予想しながら投資判断を行うことは「投機的」な投資手法と捉えられることが多いように思います。では、ほんとうにファンダメンタルズを分析して将来の株価を予測することはできるのでしょうか。
御存知の通り、株価を一株利益で割ったものが株価収益率、通称PER(Price Earning Ratio)になります。
(株価)÷(一株利益)=(PER)
この式を変更して一株利益を右辺に移すと次の式になります。
(株価)=(PER)✕(一株利益)
つまり将来のPERあるいは将来の一株利益が予測できれば株価を予想できることになります。
PERは一株利益に対して何倍の価格で株式が取引されているか、つまりその株式の人気の度合いをあらわしていますが、将来的な一株利益の成長性を先取りしているとも捉えられます。一株利益100円、株価1000円、つまりPER10倍の会社があったとします。この企業の所属している業界が今後無期限に多額の補助金を受け取れることになったとニュースで伝えられたとすると株価が上がることになりますが、いったいいくらになるでしょうか。一株利益が100円から150円へ増えると予測する人は適正株価は1500円、もし一株利益が200円に倍増すると予測すれば株価は2000円まで上がる可能性がある、と判断しそうです。この場合、一株利益は100円に対してPERはそれぞれ15倍、20倍になりますが1年後にはそれぞれ10倍に戻ります。そして翌年以降一株利益が同じ水準で推移すれば株価も変動しなくなってしまいそうです。つまりPERは短期的には上下しても中長期で見るとある一定の値に収斂されることが多いのではないでしょうか。実際のデータで見てみましょう。
金融経済学および行動経済学を専門としており、2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーは、エール大学の自身のサイトで1870年代から現在までの米国S&Pの株価及びシラー式PERの推移を公開しています。シラー式PERとは、過去1年の一株利益ではなく過去10年の一株利益の実質の平均値と実質の株価から計算されます(この「実質」というのはインフレ率調整済みという意味です)。このデータをもとに計算してみると1880−2015年までのシラー式PERの平均は16.63です。
データにはシラー式PERの推移グラフ(青線)も添付されています。かなり上下動が大きいので必ずしも平均に回帰するとは言い切れないようにも見えますが、少なくとも良く見る米国株の右肩上がりのグラフとは大きく異なっているのが見て取れます。振れ幅は大きいものの、上がれば下がり、下がれば上がっています。
(前述のエール大サイトで公開されているエクセルデータに添付されている表から抜粋、黄線と「16.63」は筆者が付加)
興味がある方は先程のサイトのStock market dataセクションにある「U.S. Stock Markets 1871-Present and CAPE Ratio」でデータをダウンロードできます。
ちなみに、現在のS&Pのシラー式PERは24.34なので平均を大幅に上回っていますのでこの指標でみると割高な環境にあるということになります。やはりFRBの金利が上がったら反応してもおかしくないですね。