続きです。
前回、米国年金基金のアセットアロケーションについて、オルタナティブ資産に25%を割り当てているという状況を確認しました。
ただ、伝統的投資手法である株式や債券に比べて歴史の浅いオルタナティブ資産に総資産の25%を割り当てるというのは、正直なところ年金基金のリスク許容度のイメージよりは高く感じます。この背景としては大規模緩和による金利低下があると思います。先日の日経新聞 経済教室面「リーマン危機10年 専門家の視点・上」という記事でもUCバークレーのバリー・アイケングリーン教授が

多くの年金基金は量的緩和の結果として債券利回りが低下したため、運用実績が上がらない。そこで利回り追求のためリスクテイクの大きいPEファンドへの投資を含め、次第に債権以外に目を向けるケースが増えている。
2018年9月12日 日本経済新聞 経済教室面「リーマン危機10年 専門家の視点・上」より引用

とコメントしています。大規模感緩和が終了し、金利が正常化していく局面ではオルタナティブ資産の比率はもう少し下がってくる可能性はありそうです。

CalPERSの2017年度のアニュアルレポートで前年からのアセットアロケーションの変更プランについて触れらているのですが、PEは10%→8%、不動産は12%→13%、合計22%→21%とすでに25%を下回っており、さらにアロケーション比率が下がってきています。
CalPERS3
「Comprehensive Annual Financial Report Fiscal Year Ended June 30,2017 」より引用

日本においても、この夏の長期金利の上昇をはじめ、金融緩和の出口についてチラホラ話題に上がってくる状況を踏まえると「25%だとリスクを取りすぎではないか」と感じます。CalPERSと同じように20%程度が適切な気がします。

さらに言うと、今回確認したオルタナティブ資産が20%〜25%といったポートフォリオ構成はまだ数年程度の運用実績なので大きな金融危機を経験していません。「実はリスクを取りすぎていた」ということが大規模な金融危機が起こってはじめて判明する可能性もあります。とは言え、こればっかりは事前にはわからんです。

------------------------------------------------------------------------
『The Business of Venture Capital』では超富裕層のアセットアロケーションについても触れられてました。こちらは出典が明らかでないので信頼性は?ですが参考までに。
株式35%:債権30%:不動産14%:キャッシュ13%:オルタナティブ資産8%
ここでの不動産は現物不動産を含んでるような気もしますが、20%程度はオルタナティブ資産ですね。

------------------------------------------------------------------------
もう一つ考慮すべき点として、個人投資家は実際のオルタナティブ資産に投資できるわけではなく、代替としてのソーシャルレンディング投資はPEクラスの中でもメザニンファンド、ディストレスト債、グローバルPEファンドに近似する可能性があるものだけで、オルタナティブ資産のメインであるヘッジファンドやPEクラスのベンチャーキャピタルやバイアウトなどの代替にはならないという点です。
「オルタナティブ資産に10%割り当てる」と言っても、「メザニンファンドだけに10%割り当てる」となるとやはりリスクが大きくなると思います。やはりここは特定の資産クラスの比率が大きくなりすぎないように注意が必要かと思います。

------------------------------------------------------------------------
これらの情報を参考に、前々回のソーシャルレンディングのオルタナティブ資産のマッピングを前提にポートフォリオを検討すると、

株式:35%~50%
債権:25%~30%
不動産系ソーシャルレンディング:10%~15%
エネルギー系+事業ローン系ソーシャルレンディング:5〜10%
キャッシュ:5~10%

といったところでしょうか。ソーシャルレンディング全部合わせて最大で20%程度でとし、不動産系ソーシャルレンディングについては、もし他に不動産系資産(REITとか現物不動産とか)を保有していれば合算して計算する必要があると思います。

今年6月末時点の自分のアセットアロケーション状況について確認してみたところ、オルタナティブ資産をソーシャルレンディングで代替するとして、以下の通りでした。
株式27%:債権(保険を含む)18%:不動産(現物資産含む)17.7%:オルタナティブ資産10.7%:キャッシュ23.6%

不動産、オルタナティブ資産ともにちょっと高めです。現物不動産は調整しようにも簡単に減らせないのが難点です。また、キャッシュ比率が高く株式・債権の比率が低いのも課題です。新興市場の調整もありそうなので、そろそろインデックスの積立投資再開しようかとも考えています。

以前は、漠然とソーシャルレンディングには総資産の10%-15%くらいを目安に考えていましたが、ソーシャルレンディングの中でも資産クラス(不動産、エネルギー、事業ローン)ごとに5%~10%の設定を設けるのが良さそうです。ただ、資産クラスごとの投資金額は現状手計算しないとわからないので個別に枠を設定するのは現実的には難しそうです。運営企業には投資状況のページ(マイページとか)で資産クラス別の投資金額がわかるようにしてもらえるとうれしいですね。

次回は参考で超強気なイェール大学のポートフォリオを紹介します。