クラウドバンクの第二期(2015年4月ー2016年3月)有価証券報告書がEDINETで公開されています(リンクはこちら)。提出日は6月30日で、代表者の氏名が「代表取締役社長 金田創」、連絡先の氏名が「取締役 橋村純」となっており、大前前社長退任後の提出扱いです。

今回のポイントは、既にお伝えした取締役の変更(参照「クラウドバンクの大前社長が退任へ」)と業務停止の財務面での影響の確認だと思います。
第二期の連結決算については、日本クラウド証券の行政処分に伴う業務停止および対策コスト増加等により116,820千円の純損失赤字決算となっています。この赤字決算が大前前社長の引責退任へとつながっており、経営者の責任の所在についてはすでにクリアになっています。

業務停止命令を受けていたので赤字決算自体はある程度想像できていましたが、今後業績回復の見込みはあるのか、また、財務安定面で問題はないのか、といったところが気になります。これらの情報について有価証券報告書だけでなく株主通信の情報を併せて見てみたいと思います。

まず、業務停止後の回復についてですが、こちらはなんといってもファンドの募集金額の推移が重要となります。この点について、株主通信に業務停止期間を挟んだ累計応募金額の推移が掲載されていました。
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こちらで確認すると、業務停止期間前1年間の平均が2.6億円の応募だったのに対して、2015年11月の業務再開後から2016年3月までは月平均3.9億円の資金を集めています。この数字を見る限り、ファンド募集面における業務停止の影響は思ったよりも軽微です。一方成長率は9%増とそれ以前の21%増からくらべると鈍化しており、まったく影響がなかったとまでは言えません。ただし成長率は毎月の応募金額自体が大きくなるに連れて鈍化するのはある程度避けれませんので、影響の度合いは判断が難しいです。

ソーシャルレンディング企業の業績を考える上で重要なのは単純な「募集累計金額」というよりも「運用金額」になります。ソーシャルレンディングの場合、運用ファンドの2%−5%程度を手数料として徴収されており、これがソーシャルレンディング企業の収入の中心となりますので毎月の「運用中ファンドの金額」というのは毎月の手数料収入に直結します。

このため、同じ「募集累計10億円」であっても「運用期間3ヶ月のファンド10億円」の場合と「運用期間1年のファンド10億円」の場合では、得られる手数料収入の合計額は4倍の差があります。一般的にソーシャルレンディングの貸付先は、銀行等の金融機関が避ける短期の貸付案件が多いために、ファンド募集累計金額だけ見ても経営的な安定面の情報としては参考にならないことが少なくありません。唯一の例外は3年のファンドを中心としたクラウドクレジットだったのですが、最近は期間の短い案件も増えてきたので以前ほどは累計だけ見ても分からないようになっています。
今回、クラウドバンクの株主通信に運用金額の推移が掲載されていました。こちらでみると、業務停止命令直後の運用額が24.4億円だったのが、業務再開時点では14.3億円まで低下してしまっていたようです。これは停止期間中に新規のファンド追加ができない一方で、償還が行われていことに起因します。その後新規ファンドの募集再開され2016年3月末時点で22.2億円まで回復、成長率も12%とファンド募集の金額を超えて成長しています。

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これらのデータを見る限り、収益の中心となるファンド募集及び運用については一定の回復が進んでいるようです。
もっとも業績面の回復についてより正確に判断するには、業務停止前後それぞれについて貸出金利とファンドの利回りのスプレッドの情報が必要になります。正確なデータではありませんが、業務再開以降のファンド利回りが以前より高くなっていると感じていますので、おそらくスプレッドは小さくなっているのではないかと思います。スプレッドの縮小を補うにはより多くのファンドを運用する必要がありますので、その点は意識しておく必要があります。もっとも、以前と比べると広告を見る頻度が明らかに減っていますので顧客獲得用のマーケティング費用を抑えてスプレッドの縮小分を補っている可能性もありそうなのでそれほど意識しなくて良いかもしれません。