クラウドバンク事業の主体である日本クラウド証券は、2015年7月に3ヶ月間の業務停止を伴う行政処分を受けました。行政処分の3ヶ月を過ぎた時点でも業務改善の一部が完了していないという理由で自主的に1ヶ月間業務停止を延長しています。その後業務は再開にあたって「業務再開の準備が整った」旨のメールはありましたが、具体的な改善内容についてはこれまで目にする機会がありませんでした。

6月に届いた株主通信で「日本クラウド証券の行政処分に関して」というページがあり、行政処分の経緯と業務改善の内容についての説明が記載されています。自分自身これまで不明だった点が多少理解できましたので、今回はその内容についてご紹介します。

経緯についてはクラウドバンクの「処分に関するQ&A」で確認していただくとして、改善内容について内容を転載します。本来各項目について2−3行での説明が付与されているのですが個人的に重要だと思うと項目のみ補足説明をいれておきます。

1.経営管理態勢、業務管理態勢、内部管理態勢の整備
  • 実務責任者の取締役への登用
  • コンプライアンス委員会による検証・牽制態勢の確率(外部専門家をコンプライアンス委員に加え、取締役会の決議事項を事前にコンプラス委員会で審査する態勢)
  • 新たな内部管理統括責任者の就任
  • 第三者機関による業務監査の実施(業務改善の実効性及び実施状況のを検証、運用態勢の評価を目的として第三者機関による外部監査を実施、今後も四半期ごとに業務監査を実施する契約を締結済み)
2.正確な顧客預かり金残高の把握、全顧客を対象とした残高照合と顧客分別金信託の適切な管理
  • 第二種業務に係る顧客預り金を第一種業務に係る顧客預り金から分離して管理(行政処分の一因となった第二種業務(クラウドバンク事業)の業容拡大によるシステム連携の問題に起因する顧客残高不一致の原因は、第一種業務(グリーンシート事業)の未入力入出金だったことが判明している)
これらの業務改善策について、2015年9−10月および2016年2月に外部機関による業務監査が実施されており、各種管理態勢について改善、相応に機能しているとの評価を受けていることが併せて記載されています。
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また、Q&Aのページで「行政処分による影響についてはどのように見ているのか。そして、その立て直しをどのように考えているのか」といった想定質問の回答が記載されています。サマリーは以下の通り。

「今回の行政処分の影響は3つに分かれる。

・4ヶ月間の業務亭による業績への影響
 → 2015年度は1年の3分の1の期間の募集停止により赤字決算に。2016年度は連結黒字化を目指す
・投資家の信頼を残ってしまったことに対する集客活動への影響
 → 今回の改善点をしっかり説明することで信頼を回復していきたい
・財務局・金融庁の当社の見方への影響
 → コンプライアンス担当をはじめとする証券業の経験者の充実や社内研修による法令遵守意識を高めて当局の信頼熟成に努める」


ここまでの内容についてどう評価するかは人によって異なると思いますが、個人的には条件付きで期待していた内容をクリアてきていると考えています。条件としては、「コンプライアンス委員の外部専門家」や「業務監査を実施している外部機関」が本当に有効な外部の第三者であること、です。今回の報告では外部の組織についての具体的な説明が割愛されているため、本当に有効な監査が実施されているかどうかが判断できません。外部機関の公表については今後是非検討してもらいたいです。

一方で、信頼回復に向けた投資家に対しての説明については十分に実施されているとは思えません。その必要性自体は認識しているようなのでセミナー等での説明は実施されているのかもしれませんが、サイトでの情報開示や説明動画のアップ等を検討していただきたいです。

業務監査については、第三者によるチェックを受けるという点での価値は非常に大きいと思いますが、それなりのコストがかかるでしょうから中期的には頻度についての見直しも必要になってくると思います。それでも最低年1回は監査法人の監査に加えて、業務監査を受ける態勢を維持して欲しいです。失った信頼を回復するのには時間はかかるでしょうが、着実に対応を進めることが一番の方法ですから。