多くの金融商品は税率20%(復興税は簡略化のため省略。以下同じ)の分離課税方式が取られているのに対して、ソーシャルレンディングの分配は雑所得とよばれる所得に分類され総合課税の対象です。総合課税ということは、給与を含めた所得総額が課税対象になり、累進税率によって税負担が変わってきます。

課税所得ごとの所得税と住民税(10%とします)のは以下の通りです。
195万円以下:15%
195万円〜330万円:20%
330万円〜695万円:30%
ソーシャルレンディング各社は分配を行う際に20%の源泉徴収を行っていますが、給与+分配金が195万円以下の場合は、確定申告を行うことで払い過ぎていた5%が還付されることになります。195万円〜330万円の場合は、プラスマイナスなし。330万円を超えると源泉徴収されている税額だけでは不足があるため追加で税金を収めることになります。

一方で雑所得が20万円未満の場合は確定申告が不要となるルールがあり、この場合は源泉徴収された20%のみで税金の支払いが完了となまりす。この状況から、課税所得330万円を境にソーシャルレンディングの最適投資方針が決まってきます。

給与所得+分配金が195万円以下の場合や195万円〜330万円の場合は通常の源泉徴収された20%と同額あるいは有利な税額なので、特に税金を意識した投資を気にする必要はありません。
一方、給与所得+分配が330万円を超える場合は源泉徴収の20%よりも税金が高くなります。このため分配金が20万円未満になるように投資することで節税になります(前提として、他に雑所得がなく住宅ローン減税や医療費控除等の確定申告を必要とする申告が無い場合になります)。課税所得330万円のうち20万円を分配金とすると残りは310万円となります。分配金以外の課税所得が310万円を超える場合は、このルールを意識する価値があります。分配金20万円に対して、自分の目標とする期待利回りから投資上限額を計算することができます。期待利回りを5%と仮定すると確定申告が不要なのは400万円が投資上限となります。これを超えると確定申告が必要で、追加の税金を支払うことになります。

課税所得が310万円というと給与収入、いわゆる年収に置き換えるとどのくらいになるでしょうか。400万円?500万円?

課税所得の計算方法についてはいろんなサイトが説明されていますので、詳しい計算はそちらをご覧いただくとして、結論としては年収が609万円の場合の課税所得が309.9万円になります。試算に使用した控除は以下の通りです。

給与所得控除 (175.8万円:年収✕20%+54万円)
基礎控除 38万円
社会保険料(85.3万円:年収の14%)

通常は家族構成や保険加入等でさらに控除が増えますので実際は年収650万円前後で課税所得310万円程度になるケースも多いのではないかと思います。ちなみに国税庁の平成26年度の民間給与実態統計調査によると正規雇用の平均年収は477万円です。

年収が600万円を超えてくる場合は、ソーシャルレンディングへの投資は400万円程度を上限とすることで節税につながる可能性があります。また年収が増えれば増えるほど税率が高くなりますので、分配金を20万円未満に収めるインセンティブが強くなります。通常であれば年収が高ければそれだけ投資余力が高くなるにも関わらず税法上は反対の方向へ働きかけているということです。ここがソーシャルレンディングの大きな課題の一つだと思います。

逆に年収600万円程度までであればある程度は税金の多寡を意識せずに手持ち資金に応じた投資を行えばよいことになります。ただし、この場合も分配金が大きくなりすぎて課税所得が330万円を越えないように計算する必要があります。例えば、年収580万円の場合、先ほどと同じ条件で試算すると課税所得は290.8万円になります。分配金が39万円までは課税所得が330万円の範囲になりますので、ざっくり投資額800万円が上限ですね。

年収が550万円〜650万円程度の場合、給与所得と各種控除から課税所得試算すると同時に、ソーシャルレンディング投資額と期待利回りを試算して、課税所得が330万円を超えていないかどうか、もし超えている場合は分配金が20万円未満に抑えられているかどうかを確認してみましょう。実際は課税所得のラダーを超えたからといって一気に税額がはね上がるわけではないのですが、雑所得20万円未満の枠はうまく活用するに越したことはありません。

雑所得には、総合課税という難点だけでなく、他の金融商品と損益通算できなかったり、雑損失を翌年以降に繰り越せないという課題もあります。今はまだ貸倒れがないのでいいですが、いずれ大幅な調整がはいることは必至でしょうから、ずっと税金取られてきてるのに損失出た時には救済なし、というのは辛いです。ソーシャルレンディングだけ優遇して欲しいとまでは思いませんが、せめて他の金融商品と同等の分離課税、損益通算ができるようにして欲しいものです。