オフィスがない環境で仕事しているとアポとアポの間に時間があく時にどうするか悩むことがあります。2−3時間程度であればカフェで仕事することがほとんどなのですが、先日午前中にアポがあって次は夕方5時からというかなり長く間が空いたことがありました。いったん自宅戻って仕事しようかとも思ったのですが、どうせ移動に時間使うぐらいなら映画でも見ようと思い気になっていた「マネー・ショート」を鑑賞することにしました。場所は有楽町、平日13:00開演です。さすがに観客は多くありませんがリタイア組以外にもスーツ姿もちらほら、結構いるもんですね。

マネー・ショートは、マイケル・ルイスの「世紀の空売り」(原題:The Big Short)が原作で、サブプライムバブルの崩壊を予見して掛けた人物像を描いた作品です。原作読んでいたのでMBS、CDS、トランシェといった専門用語が理解できないとストーリ把握が難しい作品だと思っていたのですが、映画ではそれらの専門用語を分かり易く教えてくれる場面もあるとのこと。ただ、実際見た感想で言うとあの説明で本当に分かるのか?という感じです。やっぱり先に原作読むなり、せめてサブプライムバブルに関する用語をある程度下調べしておいたほうがより作品を楽しめると思います。


投資家視点でこの作品を觀て感じたのは、原作を読んだ時にも同じ思いだったのですが、「たとえそれが正しい予測であっても、予測に賭けることはすごく難しい」ということです。バブルの最中にバブルだと気付いたとしても、いつ弾けるかが分からなければ意味がありません。もしバブル崩壊による値崩れが後3ヶ月遅れていたら、この作品の登場人物達も大幅な損失を抱えた状態でポジションを整理しないといけなかったかもしれないのではないか、と想像してしまいます。やはり将来の予測に大きく賭けるのは難しいですね。自分にはやはり時期も資産も分散投資だなぁ、と改めて感じました。

他に印象的だったのが格付け企業のS&PやメディアのWall Street Journalの犯罪的ともいうべき不誠実さでしょうか。投資家はいったい何を信じて投資判断をすれば良いのか、改めて悩ましい課題を突きつけられた感じがします。

本作で驚いたのは行動経済学の第一人者であるリチャード・セイラー教授が出演してたことです。出演といっても用語解説でちょこっと出てるだけですが、「ホットハンド」(バスケットボールである選手がフリースローを成功した場合、続けて成功する確率があるように感じること)を例にとって人間が過去の結果が将来も続きやすいと誤って考えてしまう性質を説明していました。リチャード・セイラーには「実践 行動経済学」(原題:Nudge)という何となく聞いたことあるようなタイトルの著作(共著)があり、行動経済学を実際の政策に適用する上での施策を提案しています。詳細は触れませんが、原題であるナッジという考え方にはいろんな可能性がありそうで面白かったです。 
リチャード・セイラー
日経BP社
2009-07-09




昨年「Misbehaving」という新著が出ているのですが、訳本はまだ出てません。そろそろどこかの出版社から出して欲しいですね。


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「マネー・ショート」にはブラッド・ピットが出てますが、マイケル・ルイスとブラッド・ピットの組み合わせは「マネー・ボール」に続いて2作目です。「フラッシュ・ボーイズ」あたりも映像化にむいてそうなので次はこれかもしれませんね。ちなみに、前回映画館で見たのは「フューリ」という第二次世界対戦のシャーマン戦車の作品っだんですが、これもブラッド・ピットだったんですよね。たまたまですが。