前回の続きです。というかここからが本題です。

前回紹介した番組のなかでアンドリュー・メイソンがフィナンシャル・インディペンデントについて次のように触れています。いわく「二通りの考え方がある。ひとつは、支出をきちんとコントロールすれば働かなくてもやっていけるレベル。もう一つは、例えばちょっとコーヒ飲むくらいの感覚でバイクを買えるくらいの財力があるレベル。人によってどっち目指すかは違う。」言いたいことは分かりますが妙な例え方。

一般的な場合、早期のリタイア、セミリタイアを目指している人の多くはアンドリュー・メイソンの言うところの「支出をコントロールすれば働かなくて済む」状況を目指しているのではないでしょうか。私はそうです。さらに「支出をコントロールする」というのも二通りに分かれていて、一方は節約して最低限の支出におさえてでもリタイア」、もう一方は贅沢はしないが現役時と同程度の生活水準を維持できるレベルでリタイア」です。悩ましいところですがやっぱり後者を目指したいですね。いずれの場合もどれだけの金額があればリタイアを実現できるのかは、年齢、家族構成、生活水準、住環境等によって大きく変わってきますので各自自分で必要な金額を試算する必要があります。リタイア後も東京に住み続けるとなると相応に資産を貯めないと難しいでしょう。また、現役時代に生活レベルをあげない(少なくとも上げ過ぎない)ことは必要金額を抑えるためにものすごく大事ですね。

ちなみにフィナンシャル・インディペンデントに至る前に準フィナンシャル・インディペンデントともいうべき重要なステップがあります。資産がそれなりの金額、例えば年収の5倍くらいになって、何かのきっかけで今の職場が嫌で仕方がなくなったとしたら無理にその仕事を続けるのでなく、「しばらく無収入でもなんとかなるしとっとと辞めて新しい仕事を探せば良い」と思えるようになる段階です。家族構成によっては年収の2〜3倍あればそう思えるようになるかもしれません。ただ実際は、資産の金額だけでなく転職してもやっていけるスキルを意識して付けておくこともすごく大事です。特に20代30代の人は意識しておくほうが良いと思います。気持ちの余裕ができることで、仕事の結果も良くなるという好循環にはいれる可能性も高くなります。

投資ブログとか見てるとリタイアを目指して投資を行っている人も少なくないですが、実際に投資でリタイアに必要な金額を貯めることは可能なのでしょうか?ここでいう投資はアセットアロケーションをもとにインデックス等で分散投資で(比較的)着実に資産を増やす行為をイメージしています。特定個別株の信用取引やレバレッジを効かせたFXでリスクもリターンも大きい投資方法でリタイアを目指すのは、一か八か狙いで宝くじあたったらリタイアしたいというのと根本的には変わらないと思います。何故か自分では相場変動を予測できる気になるのですが、実際は予測通りにはいかず運に左右されることになります。ほんの一握りの人がリタイアできる代わりに、大部分の人は資金をなくす結果になってしまいます。

それでは、例えば毎年100万円を捻出して年率10%で運用できる投資を20年間続けた場合にどの程度の金額になると思いますか?

20年の元本合計は2,000万円ですが、21年後の合計金額は6,300万円になります。この数字どう思われますか?リタイできそうですか?受け取り時点で50代半ば〜50代後半で独身であれば生活スタイルによっては可能かもしれません。しかし受け取り時点で40代半ば、10代前半の子供が二人とかだとこの金額ではやはり心許ないですね。いずれにしろ、実際は年率10%を20年続けることはまず不可能です。例えば5%にして計算してみると21年後の合計は3,472万円に大きく下がります。もうちょっとリアルに毎年3%運用の想定(これでもずっと続けるのは現実的にはかなり難しいです)で計算してみると2,768万円です。とてもリタイできるレベルではないですね。

同じ期間で金額を増やすには運用利回りを上げるか投下元本を増やすしかありません。運用利回りは自分ではコントロールできませんが、投下元本の量はある程度自分でコントロールできますので、基本的には元本を増やす努力をするべきでしょう。例えば年3%で毎年300万円、20年運用で8,300万円です。状況によってはリタイアを意識できそうな金額になります。年3%、毎年362万円、20年運用なら1億円に到達します。

あるいは「早期」を多少諦めてより長い期間をかけるしかありません。年3%運用であっても、30年運用であれば毎年205万円で1億円に到達できます。なお年3%、毎年100万円、30年間の場合は4,900万円です。ただ期間30年だと、投資開始時点の年齢にもよりますが、早期リタイアというより老後資金形成と言った感が強くなります。

一方で毎年500万円投下できるとすると、年3%でもわずか15年で1億円達成、20年では1億3800万円になります。毎年800万円であればたった10年で1億円、15年で1億6000万円になります。

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500万円とか800万円とかって平均年収かそれ以上の金額なので普通にサラリーマンしているだけだとまず無理そうですが、本当に早くリタイアしたいのであれば通常よりも多くの元本を投下できる状況をつくるしかないです。かといってイチかバチかの投機だとリタイアどころかせっかくの元手を無くす可能性の方が高いでしょう。

早期リタイアを目指すには「コツコツ投資」+「何かしら投資元本を増やす方法」の両方が必要なのです。