最近海外ソーシャルレンディングネタが多いからでしょうか、「レンディングクラブ」で検索して当ブログへ来られる方が増えています。海外系の投資ネタ全般に関する話題も増やしていきたいと思っています。今回と次回はインカムゲイン狙いの米国株・ETF投資関連の話題です。

一昔前までは国内の金融機関が扱う海外投資商品というと外貨預金か投資信託くらいしかなく、海外株やETFへ投資をしよう思うと海外金融機関に口座を開く必要がありました。しかしそもそも口座を開くことが可能なのか、可能だとしてどうすればいいのかが分からないため手を出す個人投資家はごく限られていました。橘玲氏を輩出したAICの「ゴミ投資家シリーズ」が出て多少はノウハウの共有は進みましたが、それでも実際に口座開設まで実行した方は多くはなかったと思います。
ところがここ何年かで国内の証券会社から海外株やETFへの投資出来る環境が大きく進み、一気に海外投資のハードルが下がった感があります。これによりインカムゲインを狙う投資家にとっても米国株・ETFは重要な選択肢となってきています。為替リスクはありますが、財政状況の悪い日本国の円のみを持つリスクを意識する投資家も少なくなく、今後もより増えていくのではないでしょか。インカムゲイン狙いの実際の投資銘柄としては以前紹介したハイイールド関連のETF(HYG・JNK)以外にiシェアーズ 優先株式ETF(PFF)あたりが有名どころでしょうか。いずれもSBI証券やマネック証券といった国内証券会社経由で購入できます。

※実際には日本の証券会社で購入できる米国ETFはまだまだ制限があります。各社ごとに取り扱いのポリシーがあるようで、こちらが購入したいETFが取り扱われておらず、問い合わせても今後も取り扱えないと回答されることが少なくありません。以前マネックスに問い合わせた際に、取り扱わないものとして以下の回答がありました。SBIも同等の対応ではないかと思われます。
・運用会社から金融庁長官に「外国投資信託に関する届出」がされていない米国ETF、米国REIT
・MLP(Master Limited Partnership)、LP(Limited Partnership)の形態をとる会社
これらのETFを購入するには海外証券口座の開設が必要になってきます。

PFFは配当利回りが6%台で現状HYG/JNKより良いです。PFFは一般的には「金融関連(特に銀行)の優先株への投資」と説明されることが多いですが、実際の資産状況を見ると、確かに金融関係は多い(6割程度、保険を含めて7割程度)ですがそれ以外の分野の銘柄も一定程度保有しています。

PFF01

また、投資先は米国だけでなく欧州、特に英国の銘柄も対象になっています。保有銘柄リスト見るとHSBCやRBS、バークレイあたりが含まれています。オランダ銘柄では世界最大手保険グループのINGが入っています。
PFF00

私も少し保有しているのですが、価格が下がった時点で買い増ししていきたいと思ってタイミングを待っています。が、一向に価格が下がりません。以下は設定来の基準価額の推移ですが2009年くらいからずーっと$30半ば〜$40で推移しているのが確認できます。この間ずっと6%台の配当を出しています。

PFF03


一見すると基準価額は設定時の$50からは下回ったままになっていますが、試算によると設定時$10,000投資してその後の配当を再投資した場合は2015年6月後半には$14,000を越える結果となります。実際は税金や再投資のための手数料が必要なのでここまでの結果にはならないでしょうが、それにしてもリーマン・ショック前に高値で購入していた投資家も既に元本回復は終えて一定の利益が出ている状態にはなっているでしょう。このあたりはハイイールドで見た通り長期保有の効果です。
PFF04

HYGやPFFに投資する場合は、キャピタルゲインよりもインカムゲインを狙っているケースが多いと思いますが、この際に注意が必要になるのが税金です。日本と米国は租税条約を締結しているので、日本の証券会社から米国株を取引しても米国ではキャピタルゲインには課税されません。投資家は日本でのみ税金を払うことになります。一方配当金に関しては、日米で合意形成がされておらず、日本の証券会社経由で購入した米国株・ETFの配当であっても米国で10%の源泉徴収が行われます。日本の投資家には10%徴収された後の90%が配当として支払われます。さらにこの90%に日本の税金として20.315%源泉徴収された金額が配当として手元に残ることになります。

米国での源泉徴収の影響がどのくらいになるかを見るために、配当金が$100の場合に米国での徴収有無でどの程度の差になるかを計算してみます。

<米国での源泉徴収がない場合>
$100(日本認識される配当金)ー$20.32(日本税金:$100✕20.315%)=$79.68

<米国での源泉徴収がある場合>
$100(配当金)ー$10(米国税金:$100×10%)=$90
$90(日本で認識される配当金)ー$18.28(日本税金:$90✕20.315%)=$71.72

本来租税条約が機能していれば、税引き後で$79.68手元に残るはずなのに、実際は$8近く少ない値になってしまいます。この差額は配当金年間$1,000であれば$80、$10,000なら$800になります。金額が大きくなってくるとバカになりません。

何もしないと差額分が消えたままですが、確定申告で外国税額控除を申告することでこの差額を取り戻すことができます。詳しくは次回。