日本のソーシャルレンディングは消費者ローンよりも中小企業ローンが中心です。一方米国ではレンディングクラブに代表される消費者ローンが活況ですが、あわせて中小企業ローンも大きなマーケットになっています(参考:LendIt 2015(2)ー世界のオンラインレンディングサービスー)。オンラインレンディングで中小企業ローンを提供している代表企業が オンデック(OnDeck) です。
日本ではほとんど話題になっていませんが、昨年12月のレンディングクラブ上場から1週間後にオンデックもニューヨーク証券取引所に上場を果たしています(ティッカー:ONDK)。

オンデックは日本でもお馴染みの中小企業ローンに特化していますが、そのビジネスモデルが日本のソーシャルレンディング企業とは全く異なっています。

日本の場合、オンラインで多数の個人投資家から資金を集めて比較的少数の企業に貸付を行っており、貸付に関わる手数料収入が収益の柱です。
他方、オンデックは自己資金を使ってオンラインで多数の中小企業に対して貸付を行っています。貸付に伴う利息収入が収益の中心となり、デフォルトのリスクも自社で抱えています。

以下のスライドはオンデックの(株式)投資家向け説明資料からの抜粋です。
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売上項目は「手数料+利息収入」、経費項目は「顧客獲得費用+手続き関連費用+資金調達費+デフォルト損失」であることが説明されています。
以前にも取り上げましたが、日本のサービスの場合は上記のうち「利息収入」「資金調達費用」「デフォルト損失」は、ソーシャルレンディング企業ではなく個人投資家のP/Lに載ることになります(参考:ソーシャルレンディング投資の収益構造 ー本当の利回りは?ー)。

もう1枚同じ資料からの抜粋です。
ONDK02

自社でデフォルトリスクを抱えているため、オンデックの収益性はオリジネートするローン規模に加えて信用リスクとリターンを適切に設定する能力が重要になります。オンデックでは中小企業向けのスコアリングシステムを独自で開発しており、それに基づいて自動的に企業ごとのグレードを決めるシステムを構築しているようです。例えばeCommerce系のサービス事業者であれば、オンデックに過去の取引履歴を閲覧する権利を与えることによって、実績に基づいたグレードが自動的に付与されるそうです。

米国のオンラインレンディングによる中小企業ローンサービスは、あくまでも借り手向けのサービスで、オンライン化による省力・短時間、低コストにより従来より低い利率で提供することを付加価値としています。個人投資家は参加することはできません。実際オンデックのサイトには借り手向けの登録画面はありますが、投資家向けの登録画面は存在していません。これはオンデックだけではなくキャベジ(Kabbage)のような他の大手オンライン業者でも同じです。前回取り上げたゴールドマン・サックスもこのモデルになるのではないかと言われています。

そこに割ってはいろうとしているのがレンディングクラブです。グーグルやアリババといったオンラインサービス大手企業との協業により、特にオンライ事業者の取り込みを図ろうとしています。レンディングクラブの場合、P2Pモデルを維持しており、個人投資家が購入できるローン債権に「Small Business」がリストされています。レンディングクラブの場合、消費者のレーティングは実績がありますが、企業向けのレーティングの精度が今後の課題になりそうです。

ONDK03

このように米国のオンラインレンディングの事業内容を把握すると同じ中小企業ローンサービスといっても米国と日本で全く別モノであることがよく理解できます。

日本のソーシャルレンディング企業の中小企業ローンファンドとレンディングクラブのP2Pを比べて、「米国と比べて日本のはダメだ」的なコメントを見かけることがありますが、そもそも比較対象を間違えています。実際に投資している日本の個人投資家の立場としては、「消費者ローン投資(P2P)は圧倒的に米国が進んでいるが、中小企業ローン投資は投資家にとっては日本のほうが進んでいる」と感じています。

日本国内の場合、「中小企業ローン」というこれまでアクセスできなかった資産クラスへ個人投資家が少額でダイレクトにアクセスできるようになった、という点で個人投資家にとっては米国よりも有利な状況にあります。米国で個人投資家が少額でアクセスできるようになるにはレンディングクラブのこれからの頑張り次第。日本国内においても覆面化やリスク分散のしづらさといった課題もありますが、投資する・しないを自分で判断できる環境があることは選択肢がない環境よりも大幅に先に進んでいます。この点はマーケットを開拓してきたmaneoをはじめとする日本のソーシャルレンディング企業の取り組みに敬意を表したいです。
もちろんここで止まることなく、規制の範囲内での情報公開の充実や自動スコアリングを始めとしたオンラインレンディングの機能を備えたサービス開発等が進んでいくことを期待しています。

ちなみに日本国内でも中小企業関連のサービスを手がけているオンデックという名称の企業がありますが、まったくの別会社のようです。