デフォルトの件やレンディングクラブへの投資を通じて、ソーシャルレンディング投資家の利回りを考えるには「ソーシャルレンディング投資の収益構造」という視点が欠かせないことを改めて認識しました。

投資家がソーシャルレンディング商品へ投資する場合の収益構造は、アサックスやビジネクストがビジネスローンを提供する場合の収益構造と同等です。つまり収益構造の面では
「ソーシャルレンディング企業の収益=アサックス or ビジネクストの収益」
ではなく
「投資家の収益(+ソーシャルレンディング企業の手数料)=アサックス or ビジネクストの収益」
ということです。

以前検討したビジネクストの収益構造(貸付金に対する比率)を再度見てみます。

<営業収益>       13.21%
<金融コスト>  2.05%
<貸倒コスト>  3.86%
<その他コスト> 5.00%
<経常利益>        2.30%


これをもとにソーシャルレンディング商品の内容に置き換えてみます。

<営業収益>

これは貸付金利にもとづいて融資先からソーシャルレンディング企業経由で返済される金額です。融資先への貸付金利については公開されているケースとそうでないケースが混在しています。5%程度から15%までありそうです。

<金融コスト>

投資家の視点でみれば、自分の資金を使うので0です。

<貸倒コスト>


以前の記事で検証したとおり、現状は大規模金融緩和で貸倒コストは相応に低下しています。貸付金利の傾向から企業ごとのデフォルト率について試算してみました。この試算の信ぴょう性はそれほど高いものではないですが、参考までに再掲します。

AQUSH:1%
SBIソーシャルレンディング:1%〜1.5%
クラウドバンク:2%〜2.5%
maneo:3%〜3.5%


<その他コスト>

ここに含まれる代表的なものとしてはソーシャルレンディングの手数料があげられます。投資家からの徴収分は各社2%前後のケースが多いようです(以前あっちゃんさんからいただいたコメントによるとmaneoの場合は0.5%〜10%までの幅があるようですが)。
借り手からの手数料収入は不明ですが、もし徴収している場合はその分貸出金利(=営業収益)が高くなって、貸倒コストが増えるとことになります。

<待機コスト>

ソーシャルレンディングのバスケット型案件の場合、ファンドを集めてもすぐに全額が融資に回らずに一部資金に待機期間が発生したり一部だけ早期償還する可能性があります。例えば融資先が2社に分散されていてそれぞれに同額ずつ融資する場合、1社は10%で12ヶ月、もう1社は同じ10%だが待機期間があり10ヶ月しか運用できない場合、両方を合わせた返済金の合計利率は9.17%になります。バスケット型の場合待機コストを0.5%程度みておいたほうが良いでしょう。(実際はこのコスト分営業収益が下がることになります)

<経常利益>

これが投資家にとっての投資のリターンになります。表面利回りではなく本来の期待利回りです。
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SBIソーシャルレンディングは比較的情報が公開されているのでこちらを使って具体的なファンドの例をみてましょう。

私はSBIソーシャルレンディングの2014年10月第1号不動産担保ローンに投資しています。
このローンに関して公表されているデータは、平均貸出金利:5.77%、融資先は2社、SBIソーシャルレンディングの手数料2.20%、予定利回り3.57%です(貸し手からの手数料は徴収していないものとします)。この3.57%には、金融コスト(0)、貸倒れコスト(1.50%)、待機コスト(0.50%)、経常利益(残り=1.57%)に分解されます。

<営業収益>   5.77%
<金融コスト>   0%
<貸倒コスト>  1.50%
<その他コス>  2.20%(SBIソーシャルレンディング手数料分)
待機コスト>  0.50%
<経常利益>   1.57%(本来の投資家の期待利回り)

こうやってみると、貸倒れコストを負担した上での1.57%なので、ある意味現在の金融緩和を反映した相応の期待利回りに落ち着きます。今はなぜかどこもデフォルトが発生していないので、1.50%上乗せになる可能性は少なくないでしょうが本来はこの程度ですよね。
営業収益が高い=貸出金利が高い、なのでその場合は貸倒れコストが大きくなって(何度も言いますが貸倒れコストは投資家が負担します)、最終的な利回りは2%〜3%になるのが本来の実力値ではないでしょうか。表面的な利回りだけでなく実質的な利回りが事前に理解できるようになっていきたいものです。


本来であれば投資判断をする前にこれらのデータが開示されていて実質の期待利回りが計算できるようになっているべきですが、企業系融資案件の想定されるデフォルト率を提示しているところは一社もありません。現状は投資家が自分で想定するしかない状況です。おそらくデフォルト率を考慮した実質利回り(2%〜3%程度)だと魅力的に見えないのと、1案件で特定の大型案件に融資する商品が多いのでデフォルトの可能性にふれると投資が集めにくくなるのが理由でしょうか。

米国で大きく伸びているレンディングクラブでは、リスクを分散しやすくするために借り入れローンを細かく分割しており、さらに投資対象の信用度合い毎の貸出金利や想定されるデフォルト率等が提示されています。このためデフォルトを考慮した実際の期待利回りが投資実施前に分かるようになっています。

一方日本のソーシャルレンディングの場合、大型融資を複数の案件にして投資を集めるケースが少なくなく、貸出金利やデフォルトのリスクがどの程度なのかという情報は示されません。ソーシャルレンディング企業も投資家も基本的にデフォルト率ゼロを前提としているように感じます。いかにも「完璧を目指す」日本人らしいですが、東電の例をひくまでもなくリスクがゼロになることは決してありません。現状では投資家自身がデフォルト率の想定をして期待利回りを計算したり、投資対象を分散してリスク分散を図っていくしかないでしょう。

現状唯一の例外はクラウドクレジットです。最近募集が始まったヨーロッパの個人向けローンファンド4種類についてそれぞれの貸出金利、デフォルト率、期待利回りの情報が杉山社長のブログに出ています。例えばハイリスク型は貸付金利が66%、想定デフォルト率が45%で投資家の利回りは14.7%ということです(差分6.3%はクラウドクレジットと提携先のBondraの取り分ということでしょう)。
クラウドクレジット
投資先がどの程度分散されているかについてのデータは公表されていないので、一括して投資するのではなく複数回に分けて購入するということも意味があるかもしれません。問い合わせたところ今後できるだけ毎月販売していくそうです。

消費者ローンと企業融資の違いは大きいとは思いますが、他の企業もデフォルトリスクの開示については何かしら対策が必要ではないでしょうか。