それではいよいよソーシャルレンディング融資のデフォルトについて考察したいと思います。ただし今回の内容は直接根拠となるデータが手許にあるわけでもなく、単なるシロートの主観的な意見です。その点あらかじめご承知おきください。

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改めて確認してきたデータを金融緩和の前後で比較できるように一部加工してみます。

<金融緩和後のデータ>
銀行不良債権比率(2014年9月末時点):1.82%
地方銀行II不良債権比率(2014年9月末時点):3.05%
アサックス不良債権比率(2014年3月末時点):1.3%

<金融緩和前のデータ>
銀行不良債権比率(2005年ー2012年平均):2.57%
地方銀行II不良債権比率(2005年ー2012年平均):4.23%
アサックス不良債権比率(2005年ー2012年平均):4.0%
ビジネクスト貸倒コスト(2013年3月末時点):3.86%(試算)

これらの数字を見ると、金融緩和が継続している間はソーシャルレンディングの潜在的なデフォルト率も2〜3%前後で推移してもおかしくなさそうです。また大規模金融緩和が終了した時点を想定した場合は潜在的に4〜5%程度まで増加しそうです。しかし以前触れたエージェンシー問題があるので、緩和時・平常時ともに先延ばしにより見かけ上のデフォルト率は潜在的なデフォルト率より低い値、例えば緩和中は0〜1%、緩和終了後で2〜3%程度で推移する可能性もそれなりにありそうな気もします。その場合、何かのきっかけで融資資金が集まらなくなった時点でデフォルト率がより高くなり投資家はしっぺ返しを食うことになりそうです。

実際はソーシャルレンディング企業ごとに融資金利の違いがあるので貸出先の信用度にも差が出ることになります。融資金利が高いほど潜在的なデフォルト率は当然高くなりますね。
LC4
これは以前掲載した米国レンディングクラブのグレードごとの期待利回りのデータです。各グレード共通の灰色の縦棒が貸出金利を表しており、グレードごとに色の異なるカラフルな方が実際の期待利回りになっています。貸出金利は7.64%〜22.53%まで大きな差がありますが、利回りは4.89%〜9.11%と幅が小さくなっています。これは貸出金利が高いほうが借り手の信用が低く、デフォルトするケースが増えて利回りにマイナスの影響を与えるためです。
レンディングクラブのこのデータは、貸出金利が高いとデフォルトが増えるという当たり前のことを確認するのには適していますが、米国の一般消費者が借り手の中心なので日本の事業ローン商品のデフォルト率推測の参考としては不適切です。

そこで前回までにみてきた国内ノンバンクのデータを参考として見たいと思います。
ビジネスローン大手ビジネクストの2012年度平均融資金利が13.2%に対して試算した貸倒率は3.86%でした。一方同じ時期のアサックスの実質金利は10.5%程度で不良債権比率は2.1%です。また2013年度のアサックスの実質金利は10%と0.5%下がって、不良債権比率が1.4%に下がっています。ソーシャルレンディング企業の場合既存のノンバンク企業よりも貸出金利をおさえることで競争力を確保する必要があるでしょうから、同じ金利貸出10%であってノンバンクの融資先よりもリスクは高いと言う点も考慮が必要です。この情報をもとに各社のデフォルト率について考察してみます。(なおクラウドクレジットは商品の性質が異なるので今回の検証対象にしていません)

事業系ローンの融資金利が一番低いのがAQUSHで4%に統一されていますが、実際は保証会社に保証料を払う必要があると思われます(さすがに手数料の1.5%に含まれているとは思えません)。保証料次第(信用度合いで変わる)ですが少なくとも5.5%〜6%程度にはなるのではないでしょうか(この数字は借り手から手数料を取っていない前提の値です。もし、借り手からも1.5%前後の手数料取っている場合は実質金利は7%〜8.5%になり、デフォルトの可能性も上がります)。アサックスの10%で1.4%を踏まえると、現状デフォルト率は1%程度で収まるかもしれませんね。この程度で収まれば何かあっても保証会社の保証をあてに出来そうです。

SBIソーシャルレンディングの場合は5%〜8%の範囲になっています(借り手からは手数料をとっていない前提の数字です。運用実績の貸付金利に「実質」金利と記載されてなかったのでこの点は不明です)。AQUSHよりも若干幅がありそうなのでデフォルト率は1%〜1.5%程度でしょうか。

クラウドバンクについては大前社長がその著書で平均融資金利が約10%程度だとコメントされています。他に頼る数字がないのでこの数字を採用します。著書が出てしばらく時間が経っていますのでもう少し下がっているかもしれませんが、アサックスとほぼ同等金利なので、融資先に関してはアサックスより若干リスクが高くなると思われます。2%〜2.5%程度はありそうな気がします。

難しいのがmaneoです。他の4社と比べて利回りの良い案件が多いですが、必然的に貸付金利も高く設定されている事になります。また、(おそらく親会社だと想像される)UBI社が絡んでいる案件が多そうですがその場合は当然maneoの手数料に加えてUBIの手数料も徴収されているでしょう。これらから逆算していくと借り手が負担する実質的な融資金利は10%〜15%くらいの幅はありそうです。4社の中では一番金利が高くアサックスよりはビジネクストの値に近そうなので、デフォルト率も3%〜3.5%程度という感じでしょうか。

まぁあくまでも思考実験なので、きりの良い数字にしときましょう。これであれば全体の平均としては先程の2%〜3%程度ですのでそれほど違和感ない値だと思います。なお、実際の融資現場では融資金利の高低に加えて企業ごとの審査能力や回収能力の影響を受けることになると思いますが今回はその点は考慮せずあくまでも融資金利のみを信用度合いのシグナルとして考えています。このため実態とかけ離れた値になっている可能性がありますのでご承知おきください。

またもし本格的なリセッションに入った場合は企業によっては潜在デフォルト率は10%に迫る可能性も十分あるでしょう。その場合法定の上限金利が15%(100万円以上の場合)のままだと、貸倒コストを回収できなくなるケースがでてきそうです。昨年来条件を満たす一部の業者に限って上限金利の見直し論(参考:「消費者金融の規制緩和=「認可業者」に上限金利29.2%-自民党が貸金業法改正案」)がでていますがその後どうなったのでしょうか。この案のままだとソーシャルレンディング企業が認可業者にることはなさそうなので動向が気になるところです。

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やはり一定の割合でデフォルトが出る前提で投資していく必要がありますね。おおよその想定デフォルト率を推測(ひらめき?思いつき?)したので投資方針へ反映させて行こうと思います。次回。