ソーシャルレンディングの事業ローンに投資する商品もいずれかのタイミングでデフォルトが起こる可能性がある、というか必然だと思われます。では今後どの程度のデフォルト率になるのでしょうか。

まずはじめに間接金融の主役である銀行機関の融資のデフォルト率をみてみましょう。
全国銀行協会が銀行の各種統計データを公表しています。それも一部エクセルで提供してくれているものもあり加工しやすいです。

このデータを使って過去15年分の「不良債権比率」を計算してみました。
まず「不良債権」の定義ですが、「破綻先債権」「延滞債権」「3ヶ月以上延滞債権」「貸出条件緩和債権」の総額としました。それぞれの定義に興味ある方はこのサイトの説明がわかりやすいと思いますのでそちらでご確認ください。「不良債権比率」は「貸出金」に対する「不良債権」の割合として計算しています。

グラフとデータを併記します。
グラフ

年度 全国銀行平均 都市銀行 地方銀行 地方銀行II 信託銀行
1999 5.85% 4.98% 5.62% 6.71% 9.90%
2000 6.33% 5.40% 7.01% 8.23% 8.07%
2001 8.73% 9.39% 7.68% 8.91% 10.04%
2002 7.78% 7.76% 7.68% 8.91% 7.20%
2003 5.69% 4.83% 6.87% 7.40% 4.56%
2004 4.12% 3.04% 5.46% 6.34% 2.61%
2005 3.03% 1.91% 4.45% 5.29% 1.57%
2006 2.67% 1.66% 3.95% 4.54% 1.52%
2007 2.48% 1.53% 3.69% 4.36% 1.11%
2008 2.47% 1.76% 3.26% 4.31% 0.95%
2009 2.53% 1.93% 3.05% 4.01% 1.14%
2010 2.50% 1.97% 3.06% 3.74% 0.89%
2011 2.50% 1.97% 3.04% 3.81% 0.86%
2012 2.43% 1.95% 2.93% 3.78% 0.97%
2013 2.00% 1.47% 2.61% 3.28% 0.68%

この範囲では2001年度がピークになっています。2001年度は大手企業の破綻が相次ぎ、東証1部上場企業が8社も倒産してます、マイカルとか(懐かしい!)。この時期は都市銀行や信託銀行の不良債権率が10%程度になっています。
その後は一貫して下がり続けて、2006年度以降は2.5%前後で推移します。そして日銀の大規模金融緩和の効果で2013年度には2.0%に下がっています。この表には含まれていませんが2014年度にはいってからこの値はさらに下がっており2014年度中間決算時点では平均で1.82%になっています。これから出てくる2014年度本決算では更に低い値になっていそうです。この推移を見ると2010年前後に現在の形態になったソーシャルレンディングでデフォルトがなかったというのもある意味うなずけます。
リーマンショックや東日本大震災で不良債権比率が上昇していないのは、リーマンショック時に導入されたモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)が抜群の効果を発揮していいたということでしょう。2012年度いっぱいでモラトリアム法が終了する際に、延命してきた倒産予備軍が5〜6万社があるのではないかと推計されていましたが、2013年度はむしろそれまでより低下しています。モラトリアム法の終了の反動よりも2013年4月の金融緩和の導入効果の方が大きかったということでしょうか。しかし、5〜6万社の倒産予備軍はなくなったわけではなく、経営改善が進まなければ金融緩和終了後に再度懸念材料になりそうです。


ソーシャルレンディングの潜在的な不良債権率を想定する場合、どの銀行の業態が最も適切なのかは迷うところです。融資先の信用度のイメージでは地方銀行IIという気もしますが、ソーシャルレンディングの場合おそらく融資先は首都圏中心ではないかと想像しており地方銀行だと傾向に差があるかもしれません。いずれにしても、ソーシャルレンディングの潜在的なデフォルト率はここに上がっているどの数字よりも大きな値になることは間違いないと思っておいたほうが無難です。ちなみに値の落ち着いている2005年度から大規模金融緩和が始まる以前の2012年度の地方銀行IIの平均値は4.23%です。なお地方銀行IIの不良債権も直近の2014年9月期のデータでは3.05%に下がっています。このあたりの数字はひとつの目安になるかもしれません。