実践ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングを中心に資産運用全般について。分散投資でリスクを抑えながら、インカムゲインとキャピタルゲインを目指します。

2018年09月

オルタナティブ投資とソーシャルレンディング(6) ーイェール大学基金のアセットアロケーションと「まとめ」ー

オルタナティブ投資の有力な資金提供者として大学基金があります。
なかでもオルタナティブ投資に積極的な機関投資家として知られているイェール大学基金はアロケーションの公開を行っており、2018年のアロケーションについても紹介しています。

Absolute Return: 25.0%
Venture Capital:17.0%
Foreign Equity: 15.5%
Leveraged Buyouts: 14.0%
Real Estate: 10.0%
Bonds and Cash: 7.5%
Natural Resources: 7.0%
Domestic Equity: 4.0%

これまでの記載の仕方になおすと
株式19.5%:債権7.5%:オルタナティブ資産73%!
です。73%はすごいですね。

オルタナティブ資産の内訳としては
不動産10%:ヘッジファンド25%:商品7%:PEファンド31%
となっていて、ヘッジファンドとPEファンド(VCファンドとバイアウトファンド)が56%というのが個人ではなかなかマネようもないアロケーションです。


The Yale Investments Officeのサイトではアニュアルレポートがアップされています。直近の「Endowment Update 2017」のハイライトを確認して見ると過去5年のリターンとアロケーションの推移が確認できます。

Yale2
「2017 The Yale Endowment」より引用

これを見ると、株式15.7%→19.1%、債権4.9%→4.6%、オルタナティブ資産77.8%→75.1%と推移していおり、今年度のオルタナティブ資産は73%なのでさらに引き下げられています。

また、オルタナティブ資産のなかでも資産クラス別の割当比率は変動が大きく、

ヘッジファンドは17.8%→25.1%と増加
バイアウトファンドは21.9%→14.2%と減少
商品は7.9%→7.8%と横ばい
不動産は20.2%→10.9%とほぼ半減
VCファンドは10%→17.1%と増加

となっています。

ポートフォリオ全体のリターンについては3.4%〜20.2%でかなり大きく変動しています。ミドルリスク・ミドルリターンではなくハイリスク・ハイリターンな印象です。
ちなみにCalPERSのリターンとの比較してみると、2015年度のCalPERSが2.2%だったのに比べてイェールの2015年度は11.5%で圧勝、2016年度は0.61%と3.4%とこちらもイェールの勝ち、2017年度は11.2%と11.3%で横並び、という具合なので少なくともここ数年はオルタナティブ資産比率が高いポートフォリオがより有効だったということです。もちろん、だからといって今後もそうだという保証にはなりません。

The Yale Investments Officeのサイトでは、1985年からのアロケーション推移をグラフにしたものが掲載されていますが、これをみると1990年代に急速にオルタナティブ資産にアロケーションを移していった様子が読み取れます。
Yale
何かしらの理由で伝統的な株式投資を避けながらも、資産運用の目的を「守り」ではなく「攻め」で考えるのであれば、このくらい思い切ったオルタナティブ資産へのアロケーションもありかもしれませんね。ただ、個人投資家として参考にするには、ヘッジファンドやVC、バイアウトファンドへの投資、もしくは近似した商品への投資する方法を見つける必要があります。やっぱりハードル高いですね。
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これまで見てきた内容を参考にする上で、日米の市場の違い、機関投資家と個人投資家の違い、そもそもの商品の違いは決して小さくないので、あまり過大な期待を持つのは適切ではないですが、「ソーシャルレンディングがオルタナティブ資産の一部と近似するかも」という仮定のもとで機関投資家のポートフォリオを参考にすると、ソーシャルレンディングを一定量(不動産関係で10−15%、エネルギー、事業ローン系で5−10%:合計で20%程度)ポートフォリオに組み込むことで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えながらリターンを向上させる可能性が多少なりともあるかもしれないという期待は持てそうです。

ソーシャルレンディング運営事業者の不祥事が報道される中、よりいっそう事業者選別に注意が必要ではありますが、ソーシャルレンディング投資の主目的としてインカムゲインの向上を目指すだけでなく、ポートフォリオのパフォーマンス改善に効果があるという点を加味すれば、これまで株式や債権といった伝統的な投資手法だけを行ってきた投資家にこそ、資産の10%〜20%をソーシャルレンディングに振り向ける検討の価値があるのではないかと思っています。

とはいうもののソーシャルレンディング運営事業者の不祥事が報道される中、運営事業者の選別の重要性はこれまで以上に高くなっています。最近の運営事業者事情は追いかけていないため、新しい事業者についてはとんと疎いのでどこなら投資できそうかはなんとも言えませんが、対策の一つとしては「特定の事業者に投資が偏るのは避ける」というのが有効だと思います。例えば500万円投資するのなら、一つの事業者に500万円を投資するのではなく、5つの事業者に分けて100万円ずつ投資する方が本来望ましいです。自分なりに運営事業者のチェックポイントを決めて、それをクリアする企業があれば投資資金お偏りを避けてできるだけ幅広く投資するのが有効だと思います。

ちなみに現在私が投資しているのは投資金額の多い順にクラウドクレジット、クラウドバンク、SBIソーシャルレンディングの三社です。他にも新しいところで探そうかとも思ってますが、なかなか手がつけれていません。どっか良いとこないですかね。


オルタナティブ投資とソーシャルレンディング(5) ーソーシャルレンディングとアセットアロケーションー

続きです。
前回、米国年金基金のアセットアロケーションについて、オルタナティブ資産に25%を割り当てているという状況を確認しました。
ただ、伝統的投資手法である株式や債券に比べて歴史の浅いオルタナティブ資産に総資産の25%を割り当てるというのは、正直なところ年金基金のリスク許容度のイメージよりは高く感じます。この背景としては大規模緩和による金利低下があると思います。先日の日経新聞 経済教室面「リーマン危機10年 専門家の視点・上」という記事でもUCバークレーのバリー・アイケングリーン教授が

多くの年金基金は量的緩和の結果として債券利回りが低下したため、運用実績が上がらない。そこで利回り追求のためリスクテイクの大きいPEファンドへの投資を含め、次第に債権以外に目を向けるケースが増えている。
2018年9月12日 日本経済新聞 経済教室面「リーマン危機10年 専門家の視点・上」より引用

とコメントしています。大規模感緩和が終了し、金利が正常化していく局面ではオルタナティブ資産の比率はもう少し下がってくる可能性はありそうです。

CalPERSの2017年度のアニュアルレポートで前年からのアセットアロケーションの変更プランについて触れらているのですが、PEは10%→8%、不動産は12%→13%、合計22%→21%とすでに25%を下回っており、さらにアロケーション比率が下がってきています。
CalPERS3
「Comprehensive Annual Financial Report Fiscal Year Ended June 30,2017 」より引用

日本においても、この夏の長期金利の上昇をはじめ、金融緩和の出口についてチラホラ話題に上がってくる状況を踏まえると「25%だとリスクを取りすぎではないか」と感じます。CalPERSと同じように20%程度が適切な気がします。

さらに言うと、今回確認したオルタナティブ資産が20%〜25%といったポートフォリオ構成はまだ数年程度の運用実績なので大きな金融危機を経験していません。「実はリスクを取りすぎていた」ということが大規模な金融危機が起こってはじめて判明する可能性もあります。とは言え、こればっかりは事前にはわからんです。

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『The Business of Venture Capital』では超富裕層のアセットアロケーションについても触れられてました。こちらは出典が明らかでないので信頼性は?ですが参考までに。
株式35%:債権30%:不動産14%:キャッシュ13%:オルタナティブ資産8%
ここでの不動産は現物不動産を含んでるような気もしますが、20%程度はオルタナティブ資産ですね。

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もう一つ考慮すべき点として、個人投資家は実際のオルタナティブ資産に投資できるわけではなく、代替としてのソーシャルレンディング投資はPEクラスの中でもメザニンファンド、ディストレスト債、グローバルPEファンドに近似する可能性があるものだけで、オルタナティブ資産のメインであるヘッジファンドやPEクラスのベンチャーキャピタルやバイアウトなどの代替にはならないという点です。
「オルタナティブ資産に10%割り当てる」と言っても、「メザニンファンドだけに10%割り当てる」となるとやはりリスクが大きくなると思います。やはりここは特定の資産クラスの比率が大きくなりすぎないように注意が必要かと思います。

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これらの情報を参考に、前々回のソーシャルレンディングのオルタナティブ資産のマッピングを前提にポートフォリオを検討すると、

株式:35%~50%
債権:25%~30%
不動産系ソーシャルレンディング:10%~15%
エネルギー系+事業ローン系ソーシャルレンディング:5〜10%
キャッシュ:5~10%

といったところでしょうか。ソーシャルレンディング全部合わせて最大で20%程度でとし、不動産系ソーシャルレンディングについては、もし他に不動産系資産(REITとか現物不動産とか)を保有していれば合算して計算する必要があると思います。

今年6月末時点の自分のアセットアロケーション状況について確認してみたところ、オルタナティブ資産をソーシャルレンディングで代替するとして、以下の通りでした。
株式27%:債権(保険を含む)18%:不動産(現物資産含む)17.7%:オルタナティブ資産10.7%:キャッシュ23.6%

不動産、オルタナティブ資産ともにちょっと高めです。現物不動産は調整しようにも簡単に減らせないのが難点です。また、キャッシュ比率が高く株式・債権の比率が低いのも課題です。新興市場の調整もありそうなので、そろそろインデックスの積立投資再開しようかとも考えています。

以前は、漠然とソーシャルレンディングには総資産の10%-15%くらいを目安に考えていましたが、ソーシャルレンディングの中でも資産クラス(不動産、エネルギー、事業ローン)ごとに5%~10%の設定を設けるのが良さそうです。ただ、資産クラスごとの投資金額は現状手計算しないとわからないので個別に枠を設定するのは現実的には難しそうです。運営企業には投資状況のページ(マイページとか)で資産クラス別の投資金額がわかるようにしてもらえるとうれしいですね。

次回は参考で超強気なイェール大学のポートフォリオを紹介します。

オルタナティブ投資とソーシャルレンディング(4) ー米国年金基金のアセットアロケーションー

前々回オルタナティブ資産を保有することでリターンが向上する可能性について見ましたが、その際にはアロケーション比率については言及がされていませんでした。実際にはどの程度の資産をオルタナティブ資産に割り当てるのが良いのでしょうか。

アセットアロケーションの重要性については目にされる機会も多いと思いますので詳細は割愛しますが、ざっくりいうと「資産クラス内の個々の投資銘柄・商品選択よりも、どの資産クラスにいくら割り当てるかを適切に設計するほうが全体のパフォーマンス(ポートフォリオのリスクとリターン)に大きな影響がある」という考え方です。

オルタナティブ資産のアロケーションに関して何かしらガイドになりそうな情報がないかと探したところ、公益財団法人資本市場研究会が発行している「月刊資本市場(2017年9月号)」の「年金運用とオルタナティブ投資」というレポートで、2006年から2015年のCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金:機関投資家として世界的に著名な存在)を含む米国地方公務員年金のアセットアロケーションの推移がまとめられていました。
Trend
樺山和也「年金運用とオルタナティブ投資」より引用

このデータを見ると、オルタナティブ資産は2012年まで比率の増加が続いて、以降はざっくり
株式50%:債権25%:オルタナティブ資産25%
で固定されている感じです。

このデータだけだとオルタナティブ資産25%の内訳が分かりませんが、『The Business of Venture Capital』に2011年のCalPERSのアセットアロケーションについて
株式54%:債権23%:不動産7%:オルタナティブ資産14%
というデータがありました。オルタナティブ資産のうち1/3が不動産で2/3がそれ以外のオルタナティブ資産という比率です。これを先程のデータに当てはめると
株式50%:債権25%:不動産8%:オルタナティブ資産17%
くらいの感じでしょうか。

肝心のリターンの方ですが、先述のCalPERSはリターンを公開しているので、そちらで確認してみたいと思います。先程とありあげた2015年についてCalPERS2015年度のレポートによるとファンド全体のリターンは2.4%となっています。株式が1.0%、債券が1.2%と低い値で推移する中、不動産が12.4%、PEファンドが8.9%という高いリターンを上げたことによってファンドのリターン向上に寄与しているのが確認できます。
CalPERS
「CalPERS Reports Preliminary 2014-15 Fiscal Year Investment Returns」より引用

また、各資産クラスのリターンを1年、3年、5年、10年単位で測定した結果が2017年度のアニュアルレポートに掲載されています。

CalPERS2
「Comprehensive Annual Financial Report Fiscal Year Ended June 30,2017 」より引用

ポートフォリオ全体としては4.4%〜11.2%のリターンです。
資産クラス別にみると株式が4.3%〜19.8%のレンジで推移するのに対し、債権は0.3%〜6.5%です。一方PEは8.1%〜13.9%、不動産は−0.9%〜10%となっており、PEが比較的安定したリターンなのに対して、不動産はサブプライムショックの影響の不動産下落で影響を受けていはいるもののそれを除けば7.4%〜10%と比較的安定しています。
相対的な動きのレンジで見ると、

株式:ハイリスク・ハイリターン
PE・不動産:ミドルリスク・ミドルリターン
債権:ローリスク・ローリターン

というのが確認でき、「株式+債権」のポートフォリオよりも「株式+債権+オルタナティブ資産」のポートフォリオの方がリスク・リターンが改善するというのもうなずけます。

次回に続きます。


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