ソーシャルレンディングに投資を初めて1年が経過しました。
昨年5月にmaneoの案件に投資したのが最初でした。それをきっかけに主なソーシャルレンディング運営事業社(maneo、AQUSH、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンク、クラウドクレジット)に投資してきましたが、これまで実施した検証結果や実際に確認してきた内容をもとに投資先を見直してみました。
日本のソーシャルレンディングは、匿名組合という形態での投資になります。匿名組合による投資は通常の金融商品(預金とか証券とか投資信託とか)の投資では通常気にする必要がない「運営企業に関するリスク」を意識することが重要になります。
ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク1
ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク2
<経営情報の透明性について>
運営企業の選別については、人によって重視するポイントが異なると思いますが、私は「償還実績がある」「x年以上運営している」といった点よりも「第三者からチェックを受ける環境にある」「経営に関する情報公開を行っている」といった「経営情報の透明性」を重視しています。過去の実績が将来に対してなんら担保にならないのは、何年間も配当を繰り返してきた企業が突然破綻するといった過去の諸事件で確認できる通りです。逆に諸事件では外部からのチェックを受けていなかったため発覚が遅れたのではないかと考えています。
現時点で経営の透明性の面で一番進んでいるのはクラウドクレジットだと感じています。伊藤忠やマネックスの資本を受け入れており(まだ公表されてませんが他にもあるそうです)、かつ情報公開に積極的に取り組もうという意志を強く感じます。
また、安心感でいうとSBIグループであるSBIソーシャルレンディングに関してはやはり強いですね。
クラウドバンクに関しては、監査法人のチェックを受けた財務諸表を公開しているという点は評価できると思います。ただ、監査法人の監査は結構コストのかかる話ですのでグリーンシート事業の動向次第では取りやめになる可能性もあるのではと想像しています。もしそうなったらどうやって透明性を確保するのかが課題になってくるかもしれません。まぁ実際にそういう話を聞いているわけではないので現時点でそんなに気にする必要はないですかね。
<採算性と資本強化可能性について>
どんなに透明性が高くても事業としての採算があっておらず、かつ資金的な後ろ盾がないと破綻リスクを抱えてしまいます。いずれも数カ月前の話なので現状変わってるかもしれませんが、クラウドバンクとクラウドクレジットに関しては社長にお会いする機会があった際に事業の損益分岐について確認しました。お二人とも年間30億円の貸付というのを目安と考えておられ、それだけあれば手数料収入でコストの回収が行えるということでした。
クラウドバンクに関しては今年に入って月あたり2億円〜3億円のオリジネートがされており、このままのペースでいってもオリジネートに関しては今年あたりに30億円は超えてきそうです。ただ、手数料還元キャンペーンであれば当然手数料収入が少なくなりますし、6ヶ月案件の場合はもとになるオリジネート金額の年間手数料を半分で計算することを考えると(逆に2年モノであれば倍で計算)、オリジネートがそれなりの額で30億円は越えていかないと採算ラインに乗らないのではないかと想像しています。また、もし資本強化が必要になってくる場合、昨年実施されたような公募増資というオプションがあるのは強みといえると思いますが、どこか大手企業から資本受け入れるような話があると投資家としてもより安心できるので、そういうのも検討して欲しいですね。
クラウドクレジットはまだ目標金額には時間がかかりそうです。今後為替ヘッジの商品が出てきてどの程度伸びるのかというところに注目しています。ただ、クラウドクレジットの場合3年が基本なので、年間10億円オリジネートできれば3年で30億円となりますのでクラウドバンクよりもオリジネート金額は少なくてすみます。惜しむらくは再投資機能がなく、全部口座に振り込んでしまうので新規で10億円集め続けないといけないところでしょう。投資家としても改善して欲しい点の筆頭です。資本増強に関しては、他社と比べても独自性が強いので万一の場合も追加資本を獲得しやすいのではないかと想像しています。
一方ちょっと気になっているのはSBIソーシャルレンディングで、損益分岐がどのあたりなのかは承知していないのですが、事業開始から4年経過していまだに減資が続いています(こちら)。親会社が親会社なのでいきなり破綻するようなケースは心配していませんが、一般的な事業計画では事業開始から3年から5年程度で事業性について判断されるケースも少なくないでしょうから、事業動向によっては向こう1年程度で何かしらの判断がなされる可能性もあるかも、と妄想しています。
もっとも米国最王手のレンディングクラブですらいまだに赤字を経常しているくらいですので、当面はいずれの企業も事業拡大に向けた先行投資で赤字が続くのは避けられないでしょう。やはり資本的な後ろ盾を得やすい環境が構築できているかどうかがポイントになりそうです。SBIソーシャルレンディングの場合は今後の事業性について親会社がどう判断するかがポイントになりそうですね。
<今後の投資方針について>
いずれも課題はありそうですが、クラウドクレジット、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクの3社については投資上限を引き上げていっても大丈夫かなと思っています。とりあえず1社あたりの上限を300万円に設定しますが、今後の資産状況によっては1社500万円程度まで引き上げても良いかな、とも考えています。ただし、投資単位は1ファンドあたり10万円を上限にして分散するようにします。特にSBIソーシャルレンディングとクラウドバンクは、国内中小企業向けローンが中心で1ファンドあたりの貸出先の分散が少ないので、今後は投資上限をきっちり守ってファンドの分散に努めたいと思います。また、国内のデフォルト状況を考慮して投資期間が1年〜1年半のものかそれより短いものに限定していきます。クラウドクレジットは消費者ローンファンドなので貸出先の分散よりも為替リスクの分散を目的として10万円単位で追加投資していくつもりです。こちらは期間は3年でも特に違和感がないのですが、できれば円に変えずにそのまま再投資できるようにして欲しい。
今年はこの国内3社に米国レンディングクラブを加えた4社で投資していきます。とりあえず1年後に合計2000万円〜2500万円程度の投資額になるようにしていくつもりです。
新しい企業・サービスに関しても基準にあうところが出てくれば投資を検討していきたいと思います。いくつか新しいところが出てきていますが今のところ期待しているような情報が公開されている企業は見当たりません。まだちゃんと調べてませんが、ロジコム子会社のLCレンディングは投資できる可能性があるかもしれないと思ってます。投資することにした場合は報告したいと思います。
<投資引きあげについて>
本来投資していないファンドのことについてブログであれこれ言うべきではない(単に投資しなければいいだけ)と思っていますが、maneoとAQOUSHはこれまで投資してきている旨ブログにも記載しているので方針変更理由にも触れるほうが良いかと思い、以下に方針変更の理由を記載します。
maneoはおそらく唯一黒字が確保できていると思われるのですが、この一年のいろいろ情報収集をするなかでどうも自分の期待している情報公開のレベルではなさそうだと感じる場面が多く、ちょっと様子をみることにしました。このため貸付実行中のものを除いて一旦資金を引き上げることにしました。どちらかというとmaneo自身というより、maneoの社長である瀧本氏がもともと副社長を務めており(はっきりとした記載はありませんが)おそらく親会社であるUBIが金融庁の監督下になく、かつ経営にまつわる情報(資本構成、役員構成、財務諸表等)が公開されていない点が引っかかってます。今後このあたりの透明性が高まってくるようであれば再度追加投資を検討しようと思っています。
AQUSHに関しては、外部の資本を受け入れている点は評価できますが、この一年を通した率直な感想としては、ソーシャルレンディング事業への取り組みが現状おざなりになっていると感じており、今後追加投資は行わないつもりです。グローバルファンドは全額償還されましたが不動産担保ローンに貸し付けが残っていますので、こちらは償還金が一定額貯まった時点で引き上げていくことにします。なにか新しいサービスが始まればその時点で再度検討したいと思います。
もちろんmaneoやAQUSHに投資するのはダメだと言うつもりなど毛頭ありませんし、自分の判断がすべて正しいと主張するつもりもありません。判断基準は人それぞれだと思います。
投資に限りませんが、自分なりに基準を持って行動することがゆくゆく後悔しないために重要だと考えていますし、これからもそうしていきたいと思っています。
昨年5月にmaneoの案件に投資したのが最初でした。それをきっかけに主なソーシャルレンディング運営事業社(maneo、AQUSH、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンク、クラウドクレジット)に投資してきましたが、これまで実施した検証結果や実際に確認してきた内容をもとに投資先を見直してみました。
日本のソーシャルレンディングは、匿名組合という形態での投資になります。匿名組合による投資は通常の金融商品(預金とか証券とか投資信託とか)の投資では通常気にする必要がない「運営企業に関するリスク」を意識することが重要になります。
ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク1
ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク2
<経営情報の透明性について>
運営企業の選別については、人によって重視するポイントが異なると思いますが、私は「償還実績がある」「x年以上運営している」といった点よりも「第三者からチェックを受ける環境にある」「経営に関する情報公開を行っている」といった「経営情報の透明性」を重視しています。過去の実績が将来に対してなんら担保にならないのは、何年間も配当を繰り返してきた企業が突然破綻するといった過去の諸事件で確認できる通りです。逆に諸事件では外部からのチェックを受けていなかったため発覚が遅れたのではないかと考えています。
現時点で経営の透明性の面で一番進んでいるのはクラウドクレジットだと感じています。伊藤忠やマネックスの資本を受け入れており(まだ公表されてませんが他にもあるそうです)、かつ情報公開に積極的に取り組もうという意志を強く感じます。
また、安心感でいうとSBIグループであるSBIソーシャルレンディングに関してはやはり強いですね。
クラウドバンクに関しては、監査法人のチェックを受けた財務諸表を公開しているという点は評価できると思います。ただ、監査法人の監査は結構コストのかかる話ですのでグリーンシート事業の動向次第では取りやめになる可能性もあるのではと想像しています。もしそうなったらどうやって透明性を確保するのかが課題になってくるかもしれません。まぁ実際にそういう話を聞いているわけではないので現時点でそんなに気にする必要はないですかね。
<採算性と資本強化可能性について>
どんなに透明性が高くても事業としての採算があっておらず、かつ資金的な後ろ盾がないと破綻リスクを抱えてしまいます。いずれも数カ月前の話なので現状変わってるかもしれませんが、クラウドバンクとクラウドクレジットに関しては社長にお会いする機会があった際に事業の損益分岐について確認しました。お二人とも年間30億円の貸付というのを目安と考えておられ、それだけあれば手数料収入でコストの回収が行えるということでした。
クラウドバンクに関しては今年に入って月あたり2億円〜3億円のオリジネートがされており、このままのペースでいってもオリジネートに関しては今年あたりに30億円は超えてきそうです。ただ、手数料還元キャンペーンであれば当然手数料収入が少なくなりますし、6ヶ月案件の場合はもとになるオリジネート金額の年間手数料を半分で計算することを考えると(逆に2年モノであれば倍で計算)、オリジネートがそれなりの額で30億円は越えていかないと採算ラインに乗らないのではないかと想像しています。また、もし資本強化が必要になってくる場合、昨年実施されたような公募増資というオプションがあるのは強みといえると思いますが、どこか大手企業から資本受け入れるような話があると投資家としてもより安心できるので、そういうのも検討して欲しいですね。
クラウドクレジットはまだ目標金額には時間がかかりそうです。今後為替ヘッジの商品が出てきてどの程度伸びるのかというところに注目しています。ただ、クラウドクレジットの場合3年が基本なので、年間10億円オリジネートできれば3年で30億円となりますのでクラウドバンクよりもオリジネート金額は少なくてすみます。惜しむらくは再投資機能がなく、全部口座に振り込んでしまうので新規で10億円集め続けないといけないところでしょう。投資家としても改善して欲しい点の筆頭です。資本増強に関しては、他社と比べても独自性が強いので万一の場合も追加資本を獲得しやすいのではないかと想像しています。
一方ちょっと気になっているのはSBIソーシャルレンディングで、損益分岐がどのあたりなのかは承知していないのですが、事業開始から4年経過していまだに減資が続いています(こちら)。親会社が親会社なのでいきなり破綻するようなケースは心配していませんが、一般的な事業計画では事業開始から3年から5年程度で事業性について判断されるケースも少なくないでしょうから、事業動向によっては向こう1年程度で何かしらの判断がなされる可能性もあるかも、と妄想しています。
もっとも米国最王手のレンディングクラブですらいまだに赤字を経常しているくらいですので、当面はいずれの企業も事業拡大に向けた先行投資で赤字が続くのは避けられないでしょう。やはり資本的な後ろ盾を得やすい環境が構築できているかどうかがポイントになりそうです。SBIソーシャルレンディングの場合は今後の事業性について親会社がどう判断するかがポイントになりそうですね。
<今後の投資方針について>
いずれも課題はありそうですが、クラウドクレジット、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクの3社については投資上限を引き上げていっても大丈夫かなと思っています。とりあえず1社あたりの上限を300万円に設定しますが、今後の資産状況によっては1社500万円程度まで引き上げても良いかな、とも考えています。ただし、投資単位は1ファンドあたり10万円を上限にして分散するようにします。特にSBIソーシャルレンディングとクラウドバンクは、国内中小企業向けローンが中心で1ファンドあたりの貸出先の分散が少ないので、今後は投資上限をきっちり守ってファンドの分散に努めたいと思います。また、国内のデフォルト状況を考慮して投資期間が1年〜1年半のものかそれより短いものに限定していきます。クラウドクレジットは消費者ローンファンドなので貸出先の分散よりも為替リスクの分散を目的として10万円単位で追加投資していくつもりです。こちらは期間は3年でも特に違和感がないのですが、できれば円に変えずにそのまま再投資できるようにして欲しい。
今年はこの国内3社に米国レンディングクラブを加えた4社で投資していきます。とりあえず1年後に合計2000万円〜2500万円程度の投資額になるようにしていくつもりです。
新しい企業・サービスに関しても基準にあうところが出てくれば投資を検討していきたいと思います。いくつか新しいところが出てきていますが今のところ期待しているような情報が公開されている企業は見当たりません。まだちゃんと調べてませんが、ロジコム子会社のLCレンディングは投資できる可能性があるかもしれないと思ってます。投資することにした場合は報告したいと思います。
<投資引きあげについて>
本来投資していないファンドのことについてブログであれこれ言うべきではない(単に投資しなければいいだけ)と思っていますが、maneoとAQOUSHはこれまで投資してきている旨ブログにも記載しているので方針変更理由にも触れるほうが良いかと思い、以下に方針変更の理由を記載します。
maneoはおそらく唯一黒字が確保できていると思われるのですが、この一年のいろいろ情報収集をするなかでどうも自分の期待している情報公開のレベルではなさそうだと感じる場面が多く、ちょっと様子をみることにしました。このため貸付実行中のものを除いて一旦資金を引き上げることにしました。どちらかというとmaneo自身というより、maneoの社長である瀧本氏がもともと副社長を務めており(はっきりとした記載はありませんが)おそらく親会社であるUBIが金融庁の監督下になく、かつ経営にまつわる情報(資本構成、役員構成、財務諸表等)が公開されていない点が引っかかってます。今後このあたりの透明性が高まってくるようであれば再度追加投資を検討しようと思っています。
AQUSHに関しては、外部の資本を受け入れている点は評価できますが、この一年を通した率直な感想としては、ソーシャルレンディング事業への取り組みが現状おざなりになっていると感じており、今後追加投資は行わないつもりです。グローバルファンドは全額償還されましたが不動産担保ローンに貸し付けが残っていますので、こちらは償還金が一定額貯まった時点で引き上げていくことにします。なにか新しいサービスが始まればその時点で再度検討したいと思います。
もちろんmaneoやAQUSHに投資するのはダメだと言うつもりなど毛頭ありませんし、自分の判断がすべて正しいと主張するつもりもありません。判断基準は人それぞれだと思います。
投資に限りませんが、自分なりに基準を持って行動することがゆくゆく後悔しないために重要だと考えていますし、これからもそうしていきたいと思っています。