実践ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングを中心に資産運用全般について。分散投資でリスクを抑えながら、インカムゲインとキャピタルゲインを目指します。

2015年06月

ソーシャルレンディング投資1年経過しました ー投資先の見直しについてー

ソーシャルレンディングに投資を初めて1年が経過しました。

昨年5月にmaneoの案件に投資したのが最初でした。それをきっかけに主なソーシャルレンディング運営事業社(maneo、AQUSH、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンク、クラウドクレジット)に投資してきましたが、これまで実施した検証結果や実際に確認してきた内容をもとに投資先を見直してみました。

日本のソーシャルレンディングは、匿名組合という形態での投資になります。匿名組合による投資は通常の金融商品(預金とか証券とか投資信託とか)の投資では通常気にする必要がない「運営企業に関するリスク」を意識することが重要になります。

ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク1
ソーシャルレンディング投資のリスク・運営企業に関するリスク2


<経営情報の透明性について>
運営企業の選別については、人によって重視するポイントが異なると思いますが、私は「償還実績がある」「x年以上運営している」といった点よりも「第三者からチェックを受ける環境にある」「経営に関する情報公開を行っている」といった「経営情報の透明性」を重視しています。過去の実績が将来に対してなんら担保にならないのは、何年間も配当を繰り返してきた企業が突然破綻するといった過去の諸事件で確認できる通りです。逆に諸事件では外部からのチェックを受けていなかったため発覚が遅れたのではないかと考えています。

現時点で経営の透明性の面で一番進んでいるのはクラウドクレジットだと感じています。伊藤忠やマネックスの資本を受け入れており(まだ公表されてませんが他にもあるそうです)、かつ情報公開に積極的に取り組もうという意志を強く感じます。

また、安心感でいうとSBIグループであるSBIソーシャルレンディングに関してはやはり強いですね。

クラウドバンクに関しては、監査法人のチェックを受けた財務諸表を公開しているという点は評価できると思います。ただ、監査法人の監査は結構コストのかかる話ですのでグリーンシート事業の動向次第では取りやめになる可能性もあるのではと想像しています。もしそうなったらどうやって透明性を確保するのかが課題になってくるかもしれません。まぁ実際にそういう話を聞いているわけではないので現時点でそんなに気にする必要はないですかね。

<採算性と資本強化可能性について>
どんなに透明性が高くても事業としての採算があっておらず、かつ資金的な後ろ盾がないと破綻リスクを抱えてしまいます。いずれも数カ月前の話なので現状変わってるかもしれませんが、クラウドバンクとクラウドクレジットに関しては社長にお会いする機会があった際に事業の損益分岐について確認しました。お二人とも年間30億円の貸付というのを目安と考えておられ、それだけあれば手数料収入でコストの回収が行えるということでした。

クラウドバンクに関しては今年に入って月あたり2億円〜3億円のオリジネートがされており、このままのペースでいってもオリジネートに関しては今年あたりに30億円は超えてきそうです。ただ、手数料還元キャンペーンであれば当然手数料収入が少なくなりますし、6ヶ月案件の場合はもとになるオリジネート金額の年間手数料を半分で計算することを考えると(逆に2年モノであれば倍で計算)、オリジネートがそれなりの額で30億円は越えていかないと採算ラインに乗らないのではないかと想像しています。また、もし資本強化が必要になってくる場合、昨年実施されたような公募増資というオプションがあるのは強みといえると思いますが、どこか大手企業から資本受け入れるような話があると投資家としてもより安心できるので、そういうのも検討して欲しいですね。

クラウドクレジットはまだ目標金額には時間がかかりそうです。今後為替ヘッジの商品が出てきてどの程度伸びるのかというところに注目しています。ただ、クラウドクレジットの場合3年が基本なので、年間10億円オリジネートできれば3年で30億円となりますのでクラウドバンクよりもオリジネート金額は少なくてすみます。惜しむらくは再投資機能がなく、全部口座に振り込んでしまうので新規で10億円集め続けないといけないところでしょう。投資家としても改善して欲しい点の筆頭です。資本増強に関しては、他社と比べても独自性が強いので万一の場合も追加資本を獲得しやすいのではないかと想像しています。

一方ちょっと気になっているのはSBIソーシャルレンディングで、損益分岐がどのあたりなのかは承知していないのですが、事業開始から4年経過していまだに減資が続いています(こちら)。親会社が親会社なのでいきなり破綻するようなケースは心配していませんが、一般的な事業計画では事業開始から3年から5年程度で事業性について判断されるケースも少なくないでしょうから、事業動向によっては向こう1年程度で何かしらの判断がなされる可能性もあるかも、と妄想しています。

もっとも米国最王手のレンディングクラブですらいまだに赤字を経常しているくらいですので、当面はいずれの企業も事業拡大に向けた先行投資で赤字が続くのは避けられないでしょう。やはり資本的な後ろ盾を得やすい環境が構築できているかどうかがポイントになりそうです。SBIソーシャルレンディングの場合は今後の事業性について親会社がどう判断するかがポイントになりそうですね。

<今後の投資方針について>
いずれも課題はありそうですが、クラウドクレジット、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンクの3社については投資上限を引き上げていっても大丈夫かなと思っています。とりあえず1社あたりの上限を300万円に設定しますが、今後の資産状況によっては1社500万円程度まで引き上げても良いかな、とも考えています。ただし、投資単位は1ファンドあたり10万円を上限にして分散するようにします。特にSBIソーシャルレンディングとクラウドバンクは、国内中小企業向けローンが中心で1ファンドあたりの貸出先の分散が少ないので、今後は投資上限をきっちり守ってファンドの分散に努めたいと思います。また、国内のデフォルト状況を考慮して投資期間が1年〜1年半のものかそれより短いものに限定していきます。クラウドクレジットは消費者ローンファンドなので貸出先の分散よりも為替リスクの分散を目的として10万円単位で追加投資していくつもりです。こちらは期間は3年でも特に違和感がないのですが、できれば円に変えずにそのまま再投資できるようにして欲しい。
今年はこの国内3社に米国レンディングクラブを加えた4社で投資していきます。とりあえず1年後に合計2000万円〜2500万円程度の投資額になるようにしていくつもりです。
新しい企業・サービスに関しても基準にあうところが出てくれば投資を検討していきたいと思います。いくつか新しいところが出てきていますが今のところ期待しているような情報が公開されている企業は見当たりません。まだちゃんと調べてませんが、ロジコム子会社のLCレンディングは投資できる可能性があるかもしれないと思ってます。投資することにした場合は報告したいと思います。


<投資引きあげについて>
本来投資していないファンドのことについてブログであれこれ言うべきではない(単に投資しなければいいだけ)と思っていますが、maneoとAQOUSHはこれまで投資してきている旨ブログにも記載しているので方針変更理由にも触れるほうが良いかと思い、以下に方針変更の理由を記載します。

maneoはおそらく唯一黒字が確保できていると思われるのですが、この一年のいろいろ情報収集をするなかでどうも自分の期待している情報公開のレベルではなさそうだと感じる場面が多く、ちょっと様子をみることにしました。このため貸付実行中のものを除いて一旦資金を引き上げることにしました。どちらかというとmaneo自身というより、maneoの社長である瀧本氏がもともと副社長を務めており(はっきりとした記載はありませんが)おそらく親会社であるUBIが金融庁の監督下になく、かつ経営にまつわる情報(資本構成、役員構成、財務諸表等)が公開されていない点が引っかかってます。今後このあたりの透明性が高まってくるようであれば再度追加投資を検討しようと思っています。

AQUSH
に関しては、外部の資本を受け入れている点は評価できますが、この一年を通した率直な感想としては、ソーシャルレンディング事業への取り組みが現状おざなりになっていると感じており、今後追加投資は行わないつもりです。グローバルファンドは全額償還されましたが不動産担保ローンに貸し付けが残っていますので、こちらは償還金が一定額貯まった時点で引き上げていくことにします。なにか新しいサービスが始まればその時点で再度検討したいと思います。



もちろんmaneoやAQUSHに投資するのはダメだと言うつもりなど毛頭ありませんし、自分の判断がすべて正しいと主張するつもりもありません。判断基準は人それぞれだと思います。

投資に限りませんが、自分なりに基準を持って行動することがゆくゆく後悔しないために重要だと考えていますし、これからもそうしていきたいと思っています。


 

クラウドクレジットの欧州ファンド(4)ー投資方針ー

クラウドクレジットのファンドは現状為替ヘッジがないので、資産全体のうちの外貨資産枠で購入することになります。外貨建て資産持ちたくない人やもう十分持ってて増やせない人は為替ヘッジ対応を待ちましょう。先日伺った際には7月って言ってた気がしますので、そう遠くないうちに出てくるのではないでしょうか。

私の場合、先日ご紹介したとおり外貨建て資産は現状40%程度ですが50%くらいには戻しておきたいので当ファンドはちょうどよかったです。

しばらく前からクラウドクレジットへの投資枠を引き上げていたのに新しいファンドがなかなか出なかったので、5月に「欧州3カ国消費者ローン」(3タイプ)と「イタリア消費者ローン」が発売された際に、「リスク追求型」に50万円、それ以外の3つに各10万円の合計80万円分投資しました。

「欧州3カ国消費者ローン」の最低投資額は「リスク追求型」は50万円、残りの2つは10万円です。「イタリア消費者ローン」は5万円。5月に購入した時も、本当は全ファンド10万円ずつ合計40万円にして、2−3ヶ月単位で40万円ずつ買い増すというふうにしていきたかったのですが、「リスク追求型」の最低投資金額が50万円だったのでその手段は使えませんでした。

今後の買い増しについて検討してみました。

Bondoraの一人あたり平均貸出額は30万円程度ですので、クラウドクレジットのファンド金額が500万円で、一人あたり30万円貸し付けるのであれば16人に分散して投資されます。1000万円であれば30人強です。なのでファンド規模が多いほど投資先の分散がなされますがそれでも30名程度の分散では十分な分散とは言えません。しかし一人あたりの貸付が3万円であれば500万円で160人、1000万円で300人強に分散されます。このくらいに分散されていればそれなりにリスク分散効果も期待できます。
実際の運営がどうなのかはクラウドクレジットに確認してみないとわからないので、万一分散されていなくても大丈夫なようにしておくほうが良いかもしれません。為替のタイミング分散に加えて投資先の分散の意味でも、一括してファンドを購入するよりも時期をずらして複数回購入するのが良さそうです。
もし単発の購入を検討される場合は、貸出の分散度合いについてクラウドクレジットに確認しておいたほうが良いかもしれません。

実際に買い増ししていくファンドをどれにするかについて考えてみました。

まず「イタリア消費者ローン」が最低投資金額が一番低いので一番購入タイミングを分散しやすいですが、Prestiamociについては(読める)情報がみつけられなかったので今後の追加は一旦パスすることにしました。比較的少額(20万円〜30万円程度)の投資であれば、このファンドを2ヶ月ないし3ヶ月ごとに5万円ずつ購入するのもいいかもしれません。

「欧州3カ国消費者ローン」のうち「リスク追求型」に関しては50万円からとハードルが高いので頻繁な追加は難しいですね。期待利回りが一番高いので、リターンを求める方(リスクを許容できる方)で200万円以上入れるのであれば3ヶ月毎に50万円ずつこれを買うのもいいかもしれません。私は年に1回、多くても2回ですね。

「リスク低減型」と「両方追求型」はいずれも10万円から投資できるので定期買い増しの候補になります。レンディングクラブの投資を始めてから気づいたのですが、自分は思ったより保守的(ついつい返済可能性の高いAとかBに投資してしまう)で結果利回りが当初思ってたより低くなる傾向があります。ただこちらの「リスク低減型」であれば8.2%あるので悪くないんですよね。ということで両者を交互に買い増していこうかと思っています。

実際は「ペルー・小口債務者支援プロジェクト」にも追加したいと思っているので(このファンドも最低10万円から)、以下の組み合わせで20万円ずつ隔月くらいで買っていこうかと考えています。

「欧州3カ国・リスク低減型」✕10万円+「ペルー」✕10万円
「欧州3カ国・両方追求型」✕10万円+「ペルー」✕10万円

個人的にはイタリアファンドの情報がもうちょっと欲しいですね。よさ気であれば毎月買っても良いくらいの設定です。

他社とは違うユニークな商品を扱うクラウドクレジットにはこれからも期待しています。



 

クラウドクレジットの欧州ファンド(3)ー為替の影響ー

「欧州3カ国消費者ローン」と「イタリア消費者ローン」はユーロ建てで為替ヘッジがありません。このためユーロ円相場の影響を受けます。このあたりについては杉山社長ブログの「為替の動向が元利均等ファンドに与えるインパクトにつきまして」で詳細の解説がされていますので投資判断の際に一読されることをオススメします。

なお、ブログの中でネガティブなシナリオとしてユーロが30%下落するケースが検証されています。30%下落でも3年間均等に下落する場合は、10%のきた利回りがあればほぼトントンになるとの試算です。一方、投資直後に30%下落した場合はマイナス幅が10%を超えてくることになります。

ユーロといえばギリシアの問題が未解決でどちらに転ぶとしても6月には何かしらの方向が出る可能性が高いタイミングです。もしギリシアがデフォルトしたり、ユーロ+EUから離脱するような状況になったら、ユーロ円相場にも当然影響がでると思います。ただどっちに行くのかは分かりません。普通に考えると円高ユーロ安なんでしょうが、3年程度のレンジで見るとお荷物がなくなって結局ユーロ高に戻るような気もするし、そうは言ってもスペインやイタリアへの波及が懸念されてやっぱりユーロ安が続いたり、いや、逆に危機感が高まって抜本的な財政統合へ話が進んでユーロ復権に繋がる可能性も・・・やっぱり考えても無理ですね。


一方で懸念されていたデフレ圧力は若干弱まってきており、5月初旬にはドイツ国債が急落(金利は上昇)しました。原油下落効果の剥落と逆に価格反転の影響がでてきているのでしょうか。これはユーロの支援材料(円安ユーロ高要因)ですね。

Gbond
(出展:WSJ「ドイツ国債の利回り反発、歓迎すべき警鐘」)


3年前にどういう予測がされていたのかというのを見るもの参考になります。
日本総研が2012年の6月に出していた「ギリシャ「ユーロ離脱」の場合に想定されるシナリオ」ていう資料では以下のような記載になっています。

JRI
(日本総研「ギリシャ「ユーロ離脱」の場合に想定されるシナリオ」より抜粋)

「持続的な円安ユーロ高の新興は期待薄」とありますが当時100円前後だったユーロは、3年後の現在も相変わらずギリシアでもめてますが130円台になっています。欧州域内の問題だけでなく日本の金融政策や米国・中国といった大国の動向も影響しているのでしょう。やっぱり為替をあてるのは無理ですね。

そういう時はどうするか、はい、分散ですね。購入時期を分散してリスクを抑えると良いと思います。

次回、確認した内容を踏まえた投資方針について。

以下余談です。

ユーロの動向に大きく影響するギリシアの緊縮財政案について決着がずっと付きません。部外者からすると「世界経済の安定のためにドイツが譲歩しろよ」と言いたくなります。でもマイケル・ルイスの「ブーメラン」読むと「ギリシアはちゃんとやれ、ドイツは譲歩する必要なし」という気分になる事うけあいです。この本、他にもアイスランドやアイルランド、ドイツに米カリフォルニア(なんでMuni Bondの利率が高いのか分かりました)が取り上げられてます。ノンフィクションのはずですが、コメディータッチでかなり笑えます。オススメです。


マイケル・ルイスはブラッド・ピット主演映画「マネーボール」の原作者ですが、もともとはソロモン・ブラザーズで債権セールスに従事していた異色の経歴の持ち主です。昨年は「フラッシュボーイズ」でHFT(超高速取引/高頻度取引)の裏側を暴いて、米国で大きな話題となりました。

「ブーメラン」の前にデビュー作の「ライアーズ・ポーカー」やサブプライム崩落の状況を書いた「世紀の空売り」を読んでおくとなお良いです。米国のモーゲージ債権とかサブプライムで問題になったCDOやCDSのことが素人にもわかりやすいように噛み砕いて説明されており、かつストーリー自体も面白いです。

 
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