実践ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングを中心に資産運用全般について。分散投資でリスクを抑えながら、インカムゲインとキャピタルゲインを目指します。

2015年02月

個別型とバスケット型(3)

私は5年くらい前に流行ったタレブの「ブラック・スワン」を投資の教科書の一つとしています。どんなに条件が良い商品であっても「ブラック・スワン」がいる可能性があるのであれば一定の金額までしか投資すべきではないと心がけるいっぽう、「プラスのブラック・スワン」にちょっとずつ身を晒すことを心がけています。(レンディングクラブの株をNISAで買ったのも「プラスのブラック・スワン」狙いです。ちょっとという割には少し金額多かったですが)
ソーシャルレンディングでも、担保がしっかりしているからと大きな金額を集中して特定の不動産担保商品に投資したら、担保のビルにトラックが突っ込んだり(しかも車が任意保険に入ってない!)、聞いたことのない化学物質で土壌汚染されていることが後でわかったりといった事があると、資金繰りにつまってデフォルトになりかねないだけでなく担保価値は大きく棄損して元本が帰ってこないことも考えられます(かなり極端な例ですが)。これらの事項は決して事前に予想できず、万一発生した際に大きな損失につながりますので、その案件に大きく投資している人にとってはまさにブラック・スワンです。まれに1つの案件に1000万円を超える金額を投資されてる人がおられますが、他人事ながら大丈夫かいなと思ってしまいます。まぁそういう人は資産3億円くらいあるでしょうから大きなお世話なんでしょうが。

逆にソーシャルレンディングの場合どんなに良い結果でも最大のリターンが「投資元本+利回り」でそれ以上のアップサイドがありません。つまりプラスのブラック・スワンはいません。そう考えるとAll or Nothingになりかねない個別型より、投資対象が分散されているバスケット型があっているかなと思っています。

ただ現状のソーシャルレンディングバスケット型案件は融資先の分散が十分といえるかどうかは不明です。おそらくAQUSHのグローバルファンドとクラウドクレジットのペルー小口債務者支援プロジェクトは案件の性質上それなりに分散効果が期待できると思われますが(例えば1000万円のファンドで平均20万円✕50社/人に融資していると仮定すると、2−3社/人デフォルトしても影響は軽微、利率にもよりますがトータルのリターンは元本以上になります)、クラウドバンクの場合運用実績で見ると現状融資先がそこまで分散していなさそうです(だいたい2−3社程度。これだと1社デフォルトでもそれなりにダメージがあります)。融資先の分散が進むと当然管理コストも膨らみますので、国内融資の場合ファンドがそれなりの規模に育たないと十分な分散効果を出すのは難しいかもしれませんし、そもそも融資飽和状況の国内で多くの優良な貸出先を確保するのは難しそうです。投資案件自体を分散することでリスクを平準化することは必須の要件と言えます。
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また、バスケット型であれば商品設計にも幅が出せる可能性があり、ゆくゆくはこの点もアドバンテージになると思います。具体的にはAQUSHが提供している自動再投資はバスケット型でないと成立しません。自動再投資は待機期間の短縮につながるので運用効率の向上になります(つまりリターンがあがります)。ソーシャルレンディング企業が定常的に一定量の融資先を確保できるようになれば、投資期間がより長くかつ途中解約も可能な商品が開発できる可能性もあります。

先行するAQUSH、クラウドバンク、クラウドクレジットが商品をより充実させていくのに加えて、maneoとSBIソーシャルレンディングにも個別型に加えて本格的なバスケット型案件の提供を期待したいです。

決して自分に担保評価能力がないからという理由だけではないです・・・いや、本当に。

追記:タレブの「まぐれ」もオススメです。

個別型とバスケット型(2)

例としてソーシャルレンディング用として投資資金100万円を準備した場合の試算です。
以下を仮定の条件とします。
・個別型の利率は8%、バスケット型の利率は5%
・個別型の場合、担保情報が事前に確認できるが、バスケット型は担保情報は事前に確認できない
・バスケット型の貸出先は3件で、1件あたりの貸出金額は同額(33.3万円)
・リターンは税控除前の値

ケース1:個別型案件に100万円投資する場合

デフォルトがない場合:リターンは108万円
デフォルトした場合(貸し倒れ100%):リターンは担保評価に依存、最小でゼロ

投資家に担保評価能力があり担保に間違がなければ、デフォルト時も元本を回収できますので、間違いなくこれが一番よい案件になります。

ケース2:バスケット型案件に100万円投資する場合

デフォルトがない場合:リターンは105万円
1件デフォルトした場合(貸し倒れ33.3%):リターンは担保評価に依存、最小で70万円(66.7万円✕1.05)
2件デフォルトした場合(貸し倒れ66.7%):リターンは担保評価に依存、最小で35万円(33.3万円✕1.05)
3件デフォルトした場合(貸し倒れ100%):リターンは担保評価に依存、最小でゼロ

分散効果でリスクはおさえられますが、1件でもデフォルトするとダメージが大きいです。

ケース3:バスケット型案件10件に10万円ずつ投資する場合

デフォルトがない場合:リターンは105万円
1件デフォルトした場合(貸し倒れ3.3%):リターンは担保評価に依存、最小で101.5万円(96.7万円✕1.05)
2件デフォルトした場合(貸し倒れ6.7%):リターンは担保評価に依存、最小で98万円(93.3万円✕1.05)
3件デフォルトした場合(貸し倒れ10%):リターンは担保評価に依存、最小で94.5万円(90万円✕1.05)
    <略>
29件デフォルトした場合(貸し倒れ96.7%):リターンは担保評価に依存、最小で94.5万円(90万円✕1.05)
30件デフォルトした場合(貸し倒れ100%):リターンは担保評価に依存、最小でゼロ

このケースでは1件デフォルトであれば元本が全く回収できなくてもトータルでプラスを維持できます。ちなみに個別型で同じ効果を求めるには8%案件14件に10万円ずつ投資すれば1件デフォルトでトータルの元本確保になります。

以上はあくまでも理論上の試算ではありますが、現実においても分散投資によるリスク低減効果はある程度は期待できると思います。
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ソーシャルレンディング商品に投資する上で十分な担保評価能力があることを要求することは、ソーシャルレンディングがより広く一般の個人投資家に受け入れられる環境を作る上でバリアになります。
また、数件程度の投資であれば一つひとつの案件を吟味することもできるかもしれませんが、リスク分散を考えると「広く浅く」投資できる環境は重要なので10件、20件と投資していくことを考えると個別の案件の詳細を追い続けるのにも限界があります。根抵当だのLoan to Valueだのよー分からんという人(私です)や、いちいち手間かけて登記謄本確認したりするのが面倒な人(私です)はバスケット案件の分散投資でデフォルトリスクを軽減するというのが良いのではないでしょうか

選択にあたっては他にも留意するポイントがあります。

個別型とバスケット型(1)

ソーシャルレンディングの投資商品は融資対象の数によって2種類に分類されます。
集めた資金を一つの特定案件に融資する個別型と、複数の案件に融資するバスケット型です。1000万円のファンドを1社に1000万円融資するか、(例えば)100万円を10社に融資するか、ということです。
それぞれ相対的にメリット・デメリットがあります。相対的な比較であるため、一方のメリットは他方のデメリットになります。

◯個別型のメリット
・融資先の情報について担保の情報や企業の業種等がある程度公開されているケースが多く、(投資家自身に知識があれば)投資家が安全性を検討できる
・融資先のリスクと貸出利率の関係が直観的に把握できる
・(融資を決定する)ソーシャルレンディング企業の融資判断能力への依存が比較的抑えられる
・比較的管理手数料が少なくなるので利率が高い案件が増える(実際は低い案件と高い案件がそれぞれ個別に存在する。バスケット型の場合は混在で中程度の案件になりがち)

maneoやSBIソーシャルレンディングは個別型案件が中心です。担保や保証に関する情報が比較的豊富なため投資家自身に担保評価能力がある場合は、融資金額と担保の安全性を判断の上投資を行えます。不動産や融資の知識がある投資家に向いた商品だと思います。

◯バスケット案件

・投資先が複数なので、融資先の1つに貸し倒れ・遅延があっても元本全体への影響は少なくてもすむ
・リスク度合いの違う融資先を混合させることで、トータルのリスク・リターン比率を向上させることができる
・個々の融資先の信用リスクの影響が比較的抑えられる

AQUSH(主にグローバルファンド)、クラウドバンク、クラウドクレジットはバスケット型案件が主体となります。融資先の一つがコケても全体への影響は制限されます。不動産や融資の知識が十分でない投資家やリスク分散を好む投資家向けの商品です。

どちらが投資先として好ましいかは個人の状況によりますので、一概には言えません。
両者でデフォルトリスクへの対応の仕方も変わります。個別型の場合、あくまでも事前に確認できる担保情報に基づいて、デフォルト時の元本安全性を評価することになります。バスケット型の場合、事前に担保情報は確認できないので、デフォルトがあっても元本への影響を抑えるための分散投資が必要になります。次回、実際に試算してみます。



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